おやすみなさい!

睡眠こそ最強の解決策である マシュー・ウォーカー SB Creative

もうお読みかもしれませんが、私はこの本をいま一番薦めたいです。というか、全ての人間に読んでほしい本だと思います。

絶賛お薦めの『修身教授録』とこの本を読んでおけば、人間の世はなんとなく上手く生きていけるのではないかと思いました。

以前ご紹介した『最高の体調』でも、現代社会を生き抜いて「文明病」から身を護る様々な方法が、まんべんなく述べられていました。

この本はとくに「睡眠」について、睡眠コンサルタント、睡眠科学者である著者が多くの実験やエビデンスからなる信頼性のある話を繰り広げてくれます。

睡眠は大切だとは、うすうす知っていました。疲れた体と頭を休める。あるいは記憶にとっても、寝ている間に記憶の整理をするから睡眠は大切だ、程度に感じていました(医者らしくなくてすいません)。

そういった今までよく知られたことはもちろん、最近分かってきた睡眠の効果についても専門的で高度なレベルから日常的で実感・実践しやすいレベルまで詳しく解説してくれています。

ときどき入るジョークの切れも、読書中の眠気を払ってくれます(ちょっと弱いかも)。

読むと人生が変わります、というか、読むことにより人生の生き方を変えようとしてしまいます。一家に一冊、お薦めです。

(引用文中の太字は本文によります)

カフェインの半減期は、平均して5時間から7時間になる。たとえば午後7時30分ごろに夕食後のコーヒーを1杯飲んだとすると、午前1時30分になってもまだ半分のカフェインが体内に残っていることになる。(P38)

コーヒーが眠気覚ましになることや、寝る前に飲むと眠れなくなることは分かっていましたが、ここまで詳しく数値で知ったのは初めてでした。もちろん個人差はあると思いますが、留意したいところです。

とういうことで、22時に寝るのであればコーヒーは、せいぜい15時のおやつ時間くらいまでにした方が良さそうですね。朝や昼のコーヒーはそれほど問題ないでしょう。

なんとなく、口さびしさ紛らわせにコーヒーをパカパカ飲んでいたきらいもありますので、注意しようと思いました。

ちなみに、子どもにとって朝の7時に起きることは、あなたにとっての4時起きか5時起きと同じことだ。そんな時間にすっきり起きて、朝から元気で機嫌良くするのはなかなか難しいだろう。(P116)

エー、そうだったんですね。早寝早起きは古くから美徳とされ、子どもにもおおいに勧めていました。自分はそれほどできていたわけでもありませんが。

子どもの場合は、理想的な睡眠時間が大人よりもやや後になっているそうです。だから、極端なことを言えば起きるのも遅いほうが良いということです。

学校があるから、早起きしなければならない事情もあります。しかし著者は、学校のシステム自体を、時間割り自体を遅らせるように改革してまでも、子どもに理想的な睡眠をとらせるべきだと言います。

とくに睡眠の終盤はレム睡眠という、いわば“感情の整理”をするような睡眠ステージが多いようです。その辺りをいつも中断されて起こされる子どもは、感情的に不安定になることも考えられるとのことです。

さっそく、そんな話をちょっと妻にしてみると、「そういえば、早起きさせると子どもの機嫌悪いよねー」と言っていました。

たまたまそうだったのかもしれません。でも、せめて休日には朝も睡眠をとらせて、レム睡眠で感情の整理をしてもらえればと思いました。

まあ、休日に限って普段より嬉々として早起きすることが多いですがね。子どもも、私も。

もちろん、個人差や日頃の生活習慣、気候風土による違いはあると思います。でも、こういう話もあるということを心して、子どもに付き合っていきたいところです。

読者のみなさんに、この本から学んでほしいことはたくさんある。その中でもいちばん学んでほしいのは、運転中に眠くなったら、絶対に車を止めるということだ。(P176)

私も運転中に眠くてついフラッとすることがあります。すぐに気付いていますが、そのまま寝入ってしまったらと思うと恐ろしいですね。家族を乗せてのこともありますし。

「眠いー」というと助手席の妻が「代わろうか」と言ってくれますが、なんとなく情けない気がして強引に運転を続けようとすることも多々あります。いけませんね。

運転は心身ともに緊張し、疲労しやすい作業です。また「高速(道路)催眠現象」など、眠くなってしまう要素があることもよく知られています。

やはり、ここで述べられているように、少しでも眠気を感じたら、交代するなり車を安全に止めて休憩するなりするべきですね。著者もこのように強調していますから、そうしないとこの本を読んだ意味が無いというものです。

実験でマウスからノンレム睡眠を奪い、ずっと寝かせずにいると、脳内ではまたたく間にアミロイドβや、他のアルツハイマー病に関係ある毒素が蓄積する。簡単に言うと、寝ないことは軽度の脳損傷で、睡眠は脳の掃除だということだ。(P203)

『脳を司る「脳」』を読んだときも、睡眠が脳の健康にとって大切なことを教えられました。

この本でも言及されていますが、寝ている間に細胞外スペースが広がり、バシャーッと水を流して貯まったゴミを洗い流しているのです。

認知症は今後も増え続け、すでに社会問題となっている重要な疾患です。現時点では治療法に乏しく、予防が大切です。

いわゆる“脳トレ”や運動、食事など様々な予防法が言われています。そういった中で、原因としてほぼ間違いないアミロイドβといういわば“脳のゴミ”を掃除することが、認知症の予防につながるとも考えられます。

思えば現代、次々に認知症になっていく人々は、寝る間を惜しんで社会や我々のために働いてくださったのかもしれません。その結果、脳の掃除が滞ってしまったのかもしれません。

認知症は本人のみならず家族など周囲の負担も大変です。今、予防を考えることができる我々は、十分な脳の掃除時間をとりたいものです。

昔の私は、よくこんなことを言っていた。「睡眠は健康の3本柱の1本だ。あとの2本は食事と運動だ」。しかし最近は考えを変えた。睡眠はただの柱ではない。むしろすべての基盤であり、その基盤の上に食事と運動という2本の柱が立っているのだ。(P206)

人間にとってメリットしかない行動として「運動」「瞑想」「読書」が言われており、私も様々な場で言っております。それがこの本を読んで、ちょっと考え方を変えることになりそうな気がしました。

健康のためには睡眠は柱の一つというわけではなくて、食事や運動といった柱を支えるための基盤、土台だということです。

健康維持あるいは病気の予防、改善のために食事に注意する食事療法や運動による運動療法があります。それらも、睡眠あってこその食事療法や運動療法と言えるでしょうね。

睡眠を適切にとることにより、各療法の効果もぞんぶんに発揮されると思います。

さて、私の言い続けていた運動、瞑想、読書という三本柱はどう解釈するか。著者の言う睡眠や運動、食事は主にヒトが生物として健康に」生きていくために大切な柱だと思います。

しかし、ヒトは単に生物的に生きているわけではありません。社会的な要素の極めて強い生き物でもあります。

そこで必要となるのが、人間関係や社会との関係、文化の維持や推進だと思います。そのために加えるべき柱が、「読書」なのですよ。

思えば生物として生まれたヒトは、10数年の教育により人間となり、その後も生活や仕事、そして読書から知識や技術を得て成長しながら生きていきます。読書も“ヒト”が“人間”として生きるための大切な柱です。

また、瞑想というのは、ある意味“起きていながらできる睡眠”と捉えることもできるかもしれません。

もちろん、瞑想は睡眠で得られる効果以上に様々な効果があると思いますし、睡眠は瞑想とは異なる計り知れない効果があることもこの本を読めば分かります。

そんなところで、私としてはやはり“人間らしく”生きるための三本柱は「運動」「瞑想」「読書」であり、睡眠は食事とともに生物的に生きるための基盤になるもの、と捉えようと思います。

その結果、iPadの読書は、紙の読書に比べ、メラトニンの分泌を20%以上抑えることがわかった。(P336)

うーん、睡眠という観点から見ると。電子書籍 vs. 紙の本については、紙の本に軍配が上がりそうですね。電子書籍も工夫されているとは思いますが、目の疲れなども影響度が違うのではないでしょうか。

私はもっぱら紙の本派です。電子書籍は使ったことがありません。電子書籍も様々な機能や携帯性など多くのメリットがありますし、まあ“使わず嫌い”な面もあるかと思います。

でも、寝る前に読むとしても、ライトが目に直射する電子書籍よりは紙の本の方がいいのかもしれません。

ただ、この辺りは電子機器の発達は著しいですから、目や睡眠に良いライトの開発など、これからあるかもしれませんね。

*****

さて、読書は病気の予防に大変良いと思いますよ。本を読むことそのものが“脳トレ”のような役割を果たします。さらに、読書で様々な健康に関する知識をつけ、実践することで病気を予防することにつながるでしょう。

医療の発達で治る病気は治るようになった現代、治らない病気が問題となっています。いわゆる生活習慣病や“がん”、そして認知症などです。

そういった病気は罹ってから治療をしようとしても、なかなか難しいこともあります。予防が大切です。

病気の予防には3つの段階があり、一次予防は病気になることを防ぐことです。気付かずに罹っている病気を早期発見するのが二次予防で、会社などでの検診がこれにあたります。

三次予防は病気に罹ってしまったあとに症状の進行を進めないようにしたり、失われた機能を代替するためのリハビリテーションを行ったりすることです。

できれば病気にならないで、健康に暮らしたい。一次予防が大切ですね。そのためには、どのような生活をすればいいのか。ネットなどの様々な情報源も役立ちますが、本もたくさんあります。

この本も、その一手である睡眠について詳しく書かれてあり、こういった本を読むことが自身の健康維持に、一次予防につながります。

繰り返しますが、個人差や気候などの影響はありますので、本に書いてあることが完全に自分に当てはまるとは限りません。でも、自分に合ったやり方で努力するはできます。

ぜひ皆さんも、健康についても読書を深め、いつまでも健康で文化的な生活を続けることができるようにしましょう。

もちろん、睡眠に留意したうえで。

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