ジョギングとしての読書

様々なスポーツには基礎トレーニングが大切であることは、体育系の部活動やスポーツをした経験のある人なら分かると思います。

体育系に限らず、吹奏楽部などでも基礎トレーニングとしてジョギングや筋トレなどを実施していることもあります。まあ、吹奏楽部も肺や指を激しく使うという点では体育系と考えてもよいかもしれません。

また、小説を書くといった文芸的な活動、あるいは哲学的な思考を深め、発想を得るためにも運動や散歩などが役立っていることは昔から知られています。

身体的な基礎トレーニングには様々な意義があります。ジョギングは心肺機能を高め体力をつけることに役立ちます。

筋トレは、とくに個々のスポーツや技能で使う筋肉を鍛えるのみならず、体力や全身的な運動能力の向上に関わるでしょう。筋肉がつくことで、基礎代謝も上がります。

また、ストレッチも筋肉や腱の柔軟性を高め、運動にキレを与え、ケガから身体を守ってくれる作用があります。

スポーツをする方であれば、こういった基礎トレーニングの重要性はよく理解されていると思います。そして、スポーツをする方に限らず、あらゆる人にとって健康を維持するためにも運動は有効です。

食事や睡眠に気を付けることはもちろん、適度な運動を取り入れることは健康維持の王道です。ウォーキングやジョギング、ランニング、あるいは筋トレやストレッチをしている方も多いでしょう。

一方で、脳についての基礎トレーニングに相当するものはないでしょうか。もちろん、ジョギングや筋トレといった身体運動そのものが、脳による統率で行われているわけであり、脳を使っているとは言えます。

それはそれとして、脳の身体運動に関わる以外の機能、つまり言語や記憶、感情などといった高次脳機能、あるいは視覚や聴覚などのいわゆる五感についてはどうでしょうか。そういった脳の機能を鍛え、維持するためのトレーニングのようなものは考えられないでしょうか。

いわゆる「脳トレ」として計算問題や図形問題などが普及しています。音楽や絵を題材にしているものもあり、脳の計算機能や言語機能のみならず、空間認知から芸術の理解といったものまで脳をトレーニングしてくれそうです。

ゲーム感覚で没頭することもでき、その楽しさも脳に良い影響を与えてくれると思います。

他にも、音楽を聴いたり映画を見たりして心を動かすことも、感情といった大切な脳機能のトレーニングになると思います。

そして、読書も良い「脳トレ」になると言えます。文字を読むこと、本に集中することに加えて内容を理解しようとすること、小説であれば物語の流れを感じること、登場人物の感情や心理の機微を推し量ることは、脳の多くの部分を使います。

小説で感動するもよし、思想書や実用書で新たな知識や考え方を装備するもよし。筋トレやストレッチで筋力や運動のしなやかさ、事故の回避ができるように、読書によって考える力や“頭のやわらかさ”を得ることができ、心の健康を保つこともできます。

ジョギングは全身の広い範囲の筋肉を使い、筋肉や骨格が鍛えられます。もちろん、心臓や肺も活発に活動し、呼吸機能や循環機能も鍛えられます。

身体に対するジョギングと同じように、読書は脳の広い範囲を使います。

黙読は視覚や触覚をはじめ、脳の視覚中枢や言語中枢などを使います。音読ではさらに、聴覚をはじめさらに広範な脳を使います。

入手してはみたが積んであるだけで読んでいない、いわゆる積読でさえも脳に良い効果があるかもしれません。

本の題名や書評の内容、入手しようと思ったきっかけなどが記憶あるいは「無意識」の中に存在し、脳の広範な部分と連絡して直観や創造を生み出すと言われるデフォルトモードネットワークに働きかけるかもしれません。

古来、「運動」、「瞑想」、「読書」は人間にとって有益なことしかないと言われています。瞑想はある意味“状態”であり、いわゆる瞑想そのものを行うほかにも運動や読書、仕事など様々な行動の中に見出すことができます。

多くの人は健康のためにジョギングなどの運動をします。ジョギングは身体の健康だけでなく脳の健康も保ってくれます。

身体の健康が大切なのはもちろん、自分の頭で考えることが必要とされる今とこれからの時代です。さらに脳そのものの機能を高め、健康を維持するために読書をしましょう。

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