読書家への妙薬

2021年5月22日

本は10冊同時に読め! 成毛眞 知的生きかた文庫

この本は、私の読書に対する姿勢を大幅に変えてくれた本です。

著者の成毛眞氏は書評サイト「HONZ」を主催されております。読書の世界においてもトップリーダーと言ってもよい人ではないでしょうか。

HONZは私もちょこちょこ覗かせていただいております。“これは!”と思う本にもときどき巡り合います。

『嫌われる勇気』といった人生の向きを調整してくれる良書とも、ここで出会いました。

以前にご紹介した『読書について』は、読む本を厳選して冊数を“しぼる”ような話でしたが、今回ご紹介する本は、むしろ同時並行でも“たくさん”読むことが書いてある本です。

とはいっても、『読書について』でショウペンハウエルが語ったことと、この本で述べていることは同じだと思います。

やはり“ハウツー本”や“成功本”については否定的です。いわゆる「古典」や、世の中の本質をついているような本を選ぶべきです。

成功とはイノベーション、つまり革新性のあることを実現できたときにはじめて成り立つものだ。他の人が思いつかないようなビジネスをして、他のひとがマネできない生き方をしてこそ、自分の人生を生きているのではないか。(P53)

成功した人は、その人が独自の道を切り開いたので成功したのです。それを見習ったり同じようにやったりしても成功はしません。まあ、その志や考え方を見習うのはよいかもしれませんが。

しかし、こういった本は読みやすいという点はメリットかもしれません。そこで、こういった本をきっかけに、より理論的に考察している同様のテーマについての本などを勉強してみるのも、いいのではないかと思います。

「超並列」読書術とは、1冊ずつ本を読み通す方法ではない。場所ごとに読む本を変え、1日の中で何冊もの本に目を通す読書法である。(P14)

リビング、寝室、トイレ、会社の机、カバンの中には通勤用の本と、あらゆる生活の場に本を備えることで、その場その場でいろいろな本を読み進めていくようです。

この本を読んでから、私も同時並行的に本を読むようになりました。しかし、ここで紹介されているようにいろいろなところに本を置いておくのではありません。

カバンには2,3冊の本を入れておき、机上にも(すぐ山になりますが)何冊かの本を置いておき、時間があるときに読んでいます。

それまでは、比較的1冊の本を読み終えてから次の本に移ることが多かったと思いますが、まさに10冊くらいを同時並行して読むようになりました。まあ、最近では読了していない本も取り残されていきますので、よく分からなくなっていますが。

そんなにたくさんの本を平行して読んで、内容があやふやになるのではないか。みなさんもそう心配されるかもしれません。

しかし、ただでさえ我々は日常生活のなかでも様々な場面や問題に直面したときに、そのときに応じた態度、気持ちで臨んでいるわけです。

場面だけでなく、人相手でも、相手に応じて、いわば「分人」を使い分けて対応しています。同じように、我々も様々な本を相手に、読みだした本に対する「分人」のようなものをこしらえ、対応が可能です。(「分人」については、『私とは何か』の紹介記事もご参照ください)

本は動かず、いつまでも読むのを待ってくれる「静物」です。人間相手よりも、はるかに切り替えは可能だと思います。

*****

ショウペンハウエルが言うように、ただ本をたくさん読んで何も考えないようではダメだと思います。

しかし一方で、多読・濫読により、鍛えられる読書能力もあると思います。たとえば、本を読むことに慣れてくると、「この段落はなんとなくこんなことが書いてあるんだろうなあ」と感じて、読み飛ばすことができます。

そんな感じで読み飛ばしていても、キラリと光る部分はちゃんと眼に留まるものです。

なんとなく、じっくり時間をかけて読むべき本と、ある程度読み飛ばして大意をつかみ、大切なことをひろっていける本と分けて考えてもよいかと思います。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。