新年を迎えて

2020年1月1日

言志四録 抄録 佐藤一斎 渡邉五郎三郎訳 明徳出版社

佐藤一斎は江戸時代の儒学者です。1772年に美濃(現在の岐阜県)に生まれ、高名な学者について儒学を学びました。天保の改革では老中水野忠邦により幕府の儒学者として登用され、昌平黌の責任者として活躍しました。佐藤一斎の代表的な著書が、「言志四録」です。

人の生き方や考え方、人間学について儒学をもとにした内容となっており、坂本龍馬や西郷隆盛など幕末の志士もこの書を読んで勉強したと言われています。

もともとの「言志四録」は1133条からなる大部ですが、この著書はそのうち174条の抄録となっています。書き下し文の浄書と訳文のみならず、他の書物からの参照引用もあり、大変勉強になります。

より良い人生を過ごすための一助となる本だと思いますので、日頃の生き方や仕事にもぜひ取り入れたいと思います。

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昨日を送りて今日を迎え、今日を送りて明日を迎う。人生百年此くの如きに過ぎず。故に宜しく一日を慎むべし。一日を慎まずんば、醜を身後に遺さん。恨む可し。羅山先生謂う、「暮年宜しく一日の事を謀るべし」と。余謂う、「此の言浅きに似て浅きに非ず」と。(P154) 言志晩録二五八

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今日・今を大事に生きる

昨日から今日に移る。昨年から今年に移る。人間はこれを100年弱繰り返していくわけです。時間は経過しますが、自分が生きているのは今現在しかありません。過去がどうなったとか未来はどうなるだろうとかを考える必要も時々ありますが、過去や未来によって大事な「今」が不安定となってはもともこもありません。過去は今の結果、未来は今が影響するものと考え、「今」を大事に過ごすことが得策です。

先送り、後回しにしがちな自分を、少しずつ変えていきたいと思う、年の初めです。

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人は須らく快楽なるを要すべし。快楽は心に在りて事に在らず。(P166) 言志耋録七五

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どんな環境・状況でも「心」に楽しみを

「快楽」すなわち楽しむことですが、これは心の中にあるもので、外にあるものではないということです。

外的な快楽というのは、例えばおいしい食事や楽しい娯楽、あるいは賞賛やおもわぬ収入などがあるでしょうか。仕事がうまくいっていること、人間関係(恋愛関係や家族関係、職場関係など)がうまく行っていることなどもあるかもしれません。

はたまた、快楽ではない外的なものもあります。さっきの逆で、貧困や人間関係がうまく行かないことがあるでしょう。

しかし、外的な環境がどのようであっても、自分の「心」まではそれに影響されずに、快楽とまではいかなくても、「何か得るものはないか」「何か勉強になるものはないか」という「楽しむ姿勢」で過ごしていければいいなと思います。

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怠惰の冬日は、何ぞ其の長きや。勉強の夏日は何ぞ其の短きや。長短は我れに在りて、日に在らず。待つ有るの一年は、何ぞ其の久しきや。待たざるの一年は、何ぞ其の速やかなるや。久速は心に在りて、年に在らず。(P175) 言志耋録一三九

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時間の長短・遅速は心持ち次第

子どものころ、クリスマス終了から年明けにかけての冬休み期間は、コタツにごろごろと過ごして、非常に時間の流れが緩慢に感じられた記憶があります。

現在は、休み自体も短いですが、アッというまに過ぎていきます。これは一年の経過を感じても同様で、よく「年をとると一年が短く感じられる」なんて言われています。

コタツで過ごしていた子どものころの自分は、さしあたってのイベント(クリスマスやお正月)のみを考えており、「今」を大事にしていなかったと思います。

短い休みをいただいた現在の自分は、休みをどのように過ごすかを計画して未来とその履行具合ばかり考えて、「今」を大事にしていないように思います。

そのときそのときに起こっていることを思う存分過ごすような、「今」を大事にした生き方をしていければと思います。

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「言志四録」は、それまで中国から入ってきた陽明学や朱子学といった儒学を、日本人の佐藤一斎が日頃の生活や仕事に生かしやすくまとめてくださった書物だと感じます。

この著書はそのなかでも精選した174条について、見ていて心引き締まる毛筆による浄書と、ていねいな訳文、参照文がついており、素読にも好適ですし人間学の勉強として様々な参照引用を共に勉強できるので、ときどき読み返していきたいと思います。

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