制度に任せるのではなく、自分なりに「働き方改革」しましょう

CHANGE 谷尻誠 X-knowledge

こういう本と出合うことがあるので、リアル書店はやはり必要だと感じます。K書店をぶらぶらしていて、「建築」のコーナーで見つけました。

「建築」については、以前自宅の新築をしていた時は、設計や間取りなどに興味を持ち、少しのぞいてみたこともありました。

それでも雑誌や、間取りの本などにとどまり、いわゆる「建築」コーナーにある、耐震性だとか、設計技術だとかについての専門書は見ません。

今回の本は、そういった本が並ぶ「建築」コーナーで、建築家の書いた本の一角があり、そこに平積みされていたものです。いろいろな建築家が、自身の思想や考えを著した本が他にもありました。

考えてみれば建築家も芸術家の一つだと思います。自分の考え、想い、それらを「言葉」にして、あるいは「言葉」にならないそれらを建築という立体構造物に表す。

そこには、施主の考えや想いも混合する必要があります。また、環境や法規制など一定の枠もあります。さらに実際に人間が住んだり、施設として利用するわけですから、実用的な面でも考える必要があります。

そういった世界で役立つのは、やはりアイデアを創り出すことや、日頃からの知識や経験はもちろんですが、仕事に対する情熱、執着心も必要です。

また、実用的なこと、意味のはっきりしていることだけを寄せ集めても、あまり面白くありません。ある程度のデザイン性や使って分かる便利さも望まれます。

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著者は建築家であり、起業家でもあります。都市計画、建築、インテリアなどに関する企画、設計、監理、コンサルティングや、多くの起業を行っています。

自身のバスケットボール歴や仕事での経験をもとにした、自分の活かし方、職場でのコミュニケーションや後輩の指導などに関する逸話も多く、大変勉強になります。

こういうふうに、普通なら出合わないはずのもの同士が出合うと、新しいものが生まれやすい土壌ができす。いってみればナイスな違和感。その違和感こそが、停滞している考えを刺激し、ものごとを飛躍させるジャンプ台になるんです。

(P31)

私は、仕事中などに感じる「違和感」は、何か今やっていることに問題があることを暗示していると思っています。

しかしこの本を読んで、そういった悪い面だけではなく、「ナイスな違和感」というものもあり、何か次につながる新たなアイデアへの道筋が、一瞬見えた感じもあるのかもしれないと思いました。

いずれにしても、「違和感」は潜在意識からくる「直観」のなせるものだと思います。見過ごさないで大事にすることが大切です。

そういった「違和感」を大事にして、今やっていることを見直してみたり、少し休憩や散歩したりなどして、潜在意識に任せてみると良いでしょう。

もちろん知識は大切ですが、そこに頼るだけでは足りない。さまざまな事務所でインターンを経験して豊富な知識を身に付けた人より、絶対にいい仕事をするんだという執着をもってがむしゃらに考える人のほうが、結果的にいい成果をあげるんです。

(P42)

「知識」をくまなく取り揃えれば、いい仕事ができるというものではありません。試験問題と解くのはと違います、実社会の仕事は。

仕事をする上では入念に準備して、失敗のないように当たる心構えは必要ですが、必ずうまくいかないことや失敗を経験します。

いろいろな場所でそういった「経験」も蓄積して、徐々に「知識」が「知恵」として身について使えるようになるのです。

うまくいかなくても、失敗しても「経験」と考えて前にすすむためには、ある程度の「執着」や「情熱」は推進力として必要です。

「知識」豊富でクールにスイスイうまくやっていけば良いというものでもないと思います。

自分でも「なんでこんなことやってるんだー」と感じるくらいの、いわば泥臭い「執着」、「がむしゃらさ」があってもいいと思います。

大切なのは下ごしらえ(=意味のないものを普段から集めること)をしておくこと。ストックがいつ星座になるかはわからないけれど、意味のないものこそ蓄積しておかないと意味がうまれないと思うし、意味ばかり集めていたら、いいアイデアは生まれないと思います。

(P50)

レヴィ・ストロースの言う「ブリコラージュ」という話もありますが、何が将来役に立つかはわかりません。

部品や道具、設備といった実用的なものもそうですが、自分に身につける知識や技術、考えたかも、今は役に立っていないようでも、将来何かのおりに役立つことがあります。

また、混沌とした知識や技術、考えのなかから、何かの刺激によって上手いこと役立つものが発生することもあります。

『古事記』において、イザナギとイザナミが天沼矛(あめのぬぼこ)で混沌とした大地をかき混ぜ、日本創生の舞台となる島が出来上がったように。

親切なボールばかりを投げてしまうのですが、親切で取りやすいということは、考えなくても受け取れるということ。ということは成長しない環境をつくってしまうことになる。その場はいいけれど、それ以上の発展は望めなくなるでしょうね。

(P158)

著者自身が、バスケットボールで監督に言われた言葉がきっかけとなり、今の後輩指導でも、こういった考えで当っているようです。

運動部(運動部に限らずですが)の良いところは、そのスポーツ自体を覚えて上達することもありますが、こういった「考え方」に触れることができることもあると思います。

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」ということでしょう。より抽象度の高いことを教えることで、幅広い具体例を実行できるようにするわけです。

そのためには、問いの答えをそのまま教えるのではなく、「問いの意味はどういうことか、何を知ってほしいのか」などが伝えられるといいと思います。

正解を持ってきたとしても、どうしてそう考えたのか少し押し戻して、その考え方が間違っていないかチェックすることも良いと思います。

そうすれば、「問い→答え」を解くだけではなく、自分で「問いを作る」能力も身についてくるのではないでしょうか。

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仕事をしていくうちに、仕事の知識や技術は身についてきますので、ある程度慣れたらその知識、技術の元となっている「考え方」についても、ちょっと考えてみると良いと思います。

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