人生に、セーブポイントは無いけれど

されど日記で人生は変わる 今村暁 三笠書房 知的生きかた文庫

今年の1月から日記を書き始めました。とりあえず4か月ほどは続いています。

用意した日記帳は“5年日記”の形式であり、縦に5年分の何月何日が並んでいます。日々の記載はスペース的にも小さくて楽なことが、継続できている理由かもしれません。

ときにはたくさん書きたい日もあります。そのときは欄外にはみ出したりしています。ときには書き忘れる日もあります。後日、思い出して書いています。

まだ短い蓄積ですが、最近は心境の変化もありまして、それが始まった頃のことや経過が振り返って分かり、楽しんでいます。

果たして5年間続けることができるのか。5年後、10年後にこの日記を見返したときにどのように思うのか。楽しみです。

さて、人生は選択肢にあふれていますが、ゲームと異なりセーブポイントがありません。セーブして、選択して、上手くいかなかったからリセット、ということができません。

そして、人生の選択肢にアタリハズレはありません。なぜならゲームと異なり、その選択肢を選ばなかったらと言う場合が存在しないからです。

必ず選んだ道だけが存在するのであり、選んだ道が正解なのです。正解にしなければならないのです。

しなければならないというと、プレッシャーが感じられますが、気楽に考えましょう。選んだ道で常に最善と思うことをして進んで行けばいいのです。

誰にでもこれまでの人生で、意識的にも無意識的にもいくつかの分岐があったと思います。そこを選択してきて今日があるわけです。そういったことが、日記を見返すと分かるかもしれません。

また、そこにその時の感情も書き記されていると、当時どのような「感性」を用いてその選択肢を選んだのか、どのような「感性」をふるってここまで来たのかが分かります。

今回ご紹介する本の著者は、「感性教育」「習慣教育」「能力開発」「掃除道」といった研究と実践を基に、数多くの企業のコンサルティングを行っておられるとのことです。

そして、この著書のように「日記」についても熱く語った本を出しておられます。読書記録を見返しますと『3分間日記』『頭の雑音を掃除する「メモ化」』『習慣力』の3冊を、私も以前に拝読しておりました。

プレゼン能力や、交渉力、コーチングなどなど、舶来品っぽい思考の飛び交うコンサルティング界隈におきまして、こういった「感性」「習慣」「掃除」といった、我が国で大切にされてきた考え方を思い出させてくださる方だと思います。

毎日、夢や目標を日記に書くというのは、自分の中のモチベーションを高める作業をしているだけでなく、自分の本当の「want」―夢や目標は何かということを自分に問いかけ、気づいていく作業をしているのです。(P76)

「夢」の設定が大切と言われます。でも、いざ夢を語れと言われても、どうしても遠慮したり、自分の今時点の能力範囲で考えてしまったりします。

もっと夢とは壮大なものでなくてはならないのではないか。そんな夢はとうてい叶えることができないのではないか。いろいろ考えてしまいます。

でも、そうではないのです。「want」なことを考えればいいのです。そして、この「want」なこととは、それができると思うと“心の底からワクワクする”ことなのです。

けして職場の目標や上司の理想などではなく、自分がどうしたいか、どう生きたいかなのです。仕事はそのための一手段になるかならないか、でしかありません。

ここでは夢や目標を日記に書くことを勧めています。そうすることによって、自分の「want」を日々呼び起こし、モチベーションを高めてくれます。

日々書いているうちに、夢や目標も徐々に変わっていくかもしれません。でもそれでいいんです。周囲の状況や自分の成長具合、知識や経験の積み重ねによって、新たな世界も見えてきます。それに合わせて夢や目標も微調整してよいでしょう。

また、夢や目標を日々再確認することによって、人生の方向性も微調整されてゆくのだと思います。

感性とは「感じる力」のことですが、感じることができるのは、「今」だけです。過去や未来のことを感じることはできません。過去や未来のことを感じていると思っても、それは理性で「考えている」のであって、感性で感じているのではありません。感性には「今」しかないのです。(P158)

私たちはどうしても未来を見越して考えることが多いですね。それは未来を良くして楽しく生きていきたいからです。

そのために過去の出来事や経験を思い返し、「あれはこうだったから次はこうしよう」「次はこうすれば上手くいくだろう」などと考えます。

そのように、過去を考えることも未来を考えることも、いずれも頭の中で行われている理論的なプロセスに過ぎません。曖昧なところもある記憶や、不確定性に満ちた予測によります。

それにくらべて「今」については、頭の中の理論のみならず、現時点で自分がどう感じているのか、つまり「感性」が加担してくれます。

これは五感を使って感じていることも、いわゆる第六感、直感、潜在的無意識などを使って感じていることも含まれます。

こういった「感性」は「理論」に比べて頼りない印象もあるかもしれませんが、実は結構大切にすべきものです。何より感性は感情や身体感覚とも結びついており、それによる決断は自分も腹落ちした、いわば覚悟を得た決断になります。

そうやった下した決断の先には、どのような結果になったとしても後悔はありません。不安定な現代を生きていく大切なコツと思います。

そして、ここまでも述べてきたように、そういった「今・ここ」を大事にして、「感性型の人間」となり、リアリティのある生き方をするためのツールとして、日記ほどシンプルで有効なものはないのです。(P175)

自分がどのように「今・ここ」を大事にして生きてきたか。記録や知識、経験から理論的に考えるだけでは得られない過去からの知恵が、そこにはあります。

いわば日記は「感性の記録」なのです。

そして、「感性」を大切にして日記を書き続けることによって、書く人もまた「感性」にあふれた日々を送り、決断をして生きていくことができるようになるのです。

それこそまさに、人間の生き方として人間らしくリアリティのある、理想的な生き方と言えるでしょう。

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「書く」ことは「話す」こと以上に頭の中をハッキリと世界に記す作業です。でも、「書く」には文字を記す時間がどうしても必要であり、「話す」よりも時間がかかります。

一般的に「話す」ことは、わりと頭の中で渋滞を起こさずに言葉を輩出していくことができると思います。私は話し下手なのでそうでもありませんが。

それに比べて「書く」は、書いているうちに表現したいことが頭の中からスムーズに出てくることができずに、ときにはカットされてしまうこともあります。

私はそんなとき、とりあえず書きたい話のキーワード的な言葉を並べて書いておいて、後からそれを膨らませて復元するようにしています。

いろいろ方法はあるかと思いますが、とくに「感情」「感性」については揮発性の高いモノであり、その時その日に書いておくことが大切です。

そんなとき日記は、後から見た時に歩んできた人生における「感性」の足跡が良く分かる、得難い人生のツールだと思います。

人生にセーブポイントはありませんが、こういった「感性」の足跡が、選択と決断の道程を見せてくれるのです。

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