内向型と外向型、どっちもあるから人間は成り立つ

2020年12月26日

内向型人間だからうまくいく カミノユウキ 祥伝社新書

私はどちらかというと、いや、どちらかといわなくても「内向型」です。もう、人と話したりするのも好きではないし、積極的に発言したりするのも勘弁願いたいです。

内向型とはなんでしょうか。類書には内向型診断の小テストなんかもよく載せられています。

□自分ひとりや二、三人の親しい人といるのが好ましい、□無口で冷静に見え、観察するのが好き、□話したり行動したりする前に、考えることが多い、・・・などなどの項目が並んでいます。私はたくさん当てはまります。

それとは反対のズバズバ意見を言ったり、どんどん行動に移したりする外向型が、世の中を動かし、すばらしい仕事をしていくのだろうと思います。

そして、小学校などでも、積極的に人と関わり、発言していきましょうなどと、外向型を進める教育がなされていると思います。

しかし、そういうことは確かにあるとしても、内向型の特徴も結構貴重なんですよ。

ユングの偉大な点はいろいろあると思いますが、一つはともに活動していたフロイトとアドラーについて、両者が異なる考え方をしていることに注目したことだと思います。

フロイト、ユング、アドラーは1900年台初頭に精神分析において活躍した理論家です。それぞれ独自の理論を展開しました。そういった中で、他の二人をよく見ていたのがユングです。

ユングにとってフロイトは、個人的指向が外の世界、つまり外面な充足に向いていると感じられました。彼の理論は同僚との文通や議論によって展開され、深化されました。

一方、アドラーはむしろ内面を考え、人の思考や感情へ向けられていると感じられました。個人の人間としての充足を目指したのです。

劣等感コンプレックスといった内面的苦痛の克服は、アドラー心理学のポイントの一つでもあります。(アドラーについては、『いまさらですが、アドラーの思想』の記事もご覧ください)

ユングはその両者を冷静に見つめ、フロイトはどちらかというと「外向型」、アドラーはどちらかというと「内向型」なのではないかと考えました。

その後、三人は訣別し、それぞれの道を歩みました。そしてフロイトは内向性を否定的に考え、それが近代の世間に受け入れられやすかったため、「内向型」はどうしても不健全であると考えられる傾向ができてきたようです。それが今でも続いています。

しかしその後、ユングはさらに考えました。人間には生まれつきの気質があり、極端な内向型と外向型の間のどこかに位置しているのではないかと。

だから、だれでも全く外向型、内向型ということはなく、その間のどこかに位置する気質を持っているのです。

ユングが言いたいのは、人間はみな内向型と外向型の間のどこかに位置しているのであって、それぞれ違った位置にいる人間がいるから、全体としてうまくいくのだということです。

とかく外向型がもてはやされ、目指され、さらには教育の場でさえ進められがちな現代ではあります。

そんな中で、内向型の特性もしっかり理解し、そのメリットも十分生かして生きることが、どんな人にも良い生き方の一助となると思います。

外向型にメリットがあるように、内向型にもさまざまなメリットがあります。私も、内向型だからこそ、うまくいったのではないかと思う場面もたびたびあります。

さて、自分自身の内向的な面を少し見つめてみて、そのメリットを生かせるようにしてみませんか。そう考えると、この本はとくに私のような内向型人間にとって大変心強い、勉強になる本でした。

一方、私はどちらかというと外向型だ、という方にとっては、周りにいるかもしれない内向型人間の特徴を理解いただく助けになるでしょう。

さらには、きっとあなたの中にも存在し、ときどき顔を出すかもしれない内向型の気質と、うまく付き合っていくためにも、一読ください。

仕事に集中できる環境を作る

内向型人間の仕事にとってもっとも大事なことは、集中できる環境を作ることです。刺激に敏感で、集中するまでに時間がかかる内向型人間は、仕事に集中できずにパフォーマンスを発揮できないケースが少なくありません。

(P77)

内向型人間の活動を邪魔する要因として、「刺激」が挙げられています。刺激というのは具体的に音、予定、人づきあい、思考、食、選択、光(視界)といったものです。

音は、周囲の雑音や話し声などから、空調の音、外の車の音なども含まれるでしょう。耳栓をしたり、気に入った曲をイヤホンで聞いたりするのがいいのかもしれません。

また、手帳や頭の中に立ち並ぶ「予定」や、学校や職場では避けられない「人づきあい」なども、内向型の人が集中して活動する妨げになります。

さて、こういった刺激を一時的にでも遮断して、自分の内面に向かう手段としては「瞑想」がいいのではないかと思います。

思えば瞑想は、これらの刺激を遮断することがベースにあります。瞑想というツールは、内向型人間にとって、効果的なのでしょう。

さて、これを読んで考えました。机のうえに本が積んであると、いかにも読書家に見えます。しかし、座っていると、それらも視界の刺激となり、あたかも「読んでくれ、読んでくれ」と呼びかけているようで、心が落ち着かない原因となるかもしれません。

また、机のうえに書類やタスク表などがたくさんあると、いかにも仕事をバリバリしているようにも見えます。もちろん外向型の人にとっては、そういった環境でバリバリ仕事することもできるのかもしれません。

しかし、内向型の人間にとってはそういった暗黙の「刺激」良くないのです。

そう考えれば、今はやりの「片付け」ブームではありませんが、机上はシンプルにして、手を付けている仕事のみを置いて、その仕事に取り掛かるという具合が、よいのかもしれません。

こういった、刺激を減らすという意味でも、「片付け」は効果的なのかもしれませんね。ちょっと机を片付けようと思いました。

時間を細分化せず、仕事を細分化する

仕事を単純なタスクに細分化すると、それぞれのタスクに必要な立ち上がりの時間が減ります。先ほどの「企画書を書く」という仕事なら、「資料を集める」「構成を決める」「執筆する」「図を作る」などと細分化できますし、それぞれのタスクをさらに細分化すれば、立ち上がりはもっと早くなるでしょう

(P95-96)

内向型人間が気を付けるべき「刺激」の中に、「予定」がありました。人と会う予定もあれば、仕事の進め方の予定もあるでしょう。

予定への対処法として、ここでは「細分化する」といことが述べられています。できるだけシンプルな要素に分けるということですね。

「今日は仕事をするぞ!」とおおざっぱな頑張りを述べても、具体的に何をどうするのか決まらないと、なんとなく一日が終わってしまいます。

たとえば論文作成を目指して仕事をするのであれば、今日は参考文献を集めてみようとか、ひとつこの文献を読んでみようとか、あるいは自施設のデータを集めてみようなど、具体的に何をするか、を細かく分けることです。

そうすれば、すること、するべき目標も立てやすく、一日の終わりにもどのくらい達成できたかが分かりやすいでしょう。

どうなんでしょう。外向型の人は、そう細分化しなくてもグイグイ進めて行けるのでしょうか。分かりません。

でも、自分でも仕事を細分化して良いこともあれば、ノッてきたときなどはグイグイ進むこともあり、まあ、どんな人も内向型の面もあれば、外向型の面もあるんでしょうね。

インプットにも時間をかける

内向型人間がアウトプットに時間がかかる理由は、思考を言語に変換するのに時間を必要とするからではないかと考えています。

思考→言語の変換に時間がかかるということは、言語→思考への変換、つまり人の話を聞いて理解することにも時間がかかるということです。内向型人間が会議やプレゼンを苦手としている理由はここにもあるでしょう。

(P110-112)

内向型というと、外目にはなんとなくグズグズしていて進捗が遅い印象です。でも、内面ではいろいろとよく考えているので、時間はかかるのです。アウトプットに時間がかかります。(私の場合は少しめんどくさがりなところもありますが)。

考えたこと、感じたこと、思ったことをアウトプットする、つまり他人にも分かるようにするためには、「言葉」にすることが必要です。文字にしても、発語にしても。

ここでは言語化、つまり頭の中のものを言葉にしてアウトプットすることと、体系化、つまり周囲の様々な刺激(情報)や言葉を頭の中で変換してまとめるという考えが大切です。

言語化とは、頭の中の概念や思考を言葉にすること。これは「具体化」といってもいいのかもしれません。

体系化とは時間をかけて意味を考えることでしょう。たとえば相手の言った言葉を拾って、まとめて、相手がどんなことを伝えたいのかを考えるとか。

これは「具体」と「抽象」の関係に似ているかもしれません。言語化は具体化ということ。体系化は抽象化ということ。

外向型の人間は、この変換も早いのだと思います。考えたことはパッパッと言葉にしてアウトプットし、相手の言ったことも飲み込みが早い。

内向型はそれが遅いのかもしれません。でも、遅いなりに良く考えられた言語化が可能であったり、場合によっては、内面の奥深いところの知識や経験に彩られたアウトプットが可能であったりということも、あるかもしれませんね。

*****

これは決して、内向型が良い、外向型が良さそうだけど実は良くない、という単純な話ではありません。

別の本からの引用を付けます。

ユングは、よい人生とは完全への到達をめざすものだと考えていた。完全というのは、あらゆる部分を備えることではなく、自分自身の強さと弱さを知り、それらを評価することによって、調和を達成することである。これまで論じてきたように、ユングは、外向型/内向型連続体のすべての位置が、健全であり、必要であると考えていた。

(『内向型を強みにする』 マーティ・O・レイニー PanRolling P37)

世の中には人それぞれ、様々な程度で外向的な人もいれば、内向的な人もいます。それぞれの居心地のいい居場所、環境を整え、それぞれの外向性、内向性を発揮するのです。

気質の違う者どうしが互いに補いあい、バランスをとることによって、この人間の関係はうまくいっているのだと思います。

周りを見てもそんな気がしませんか。ズバズバ言う妻と控えめな夫の夫婦がうまくいっていたり、ちょっと生活力に差のある二人がうまくいっていたり。気質の違う者同士が良い関係を続けていることは多いでしょう。

自分の気質を理解するとともに相手や周囲の人間の気質も思い量って、自分の生き方はもちろん、家庭や職場、社会を良くしていければと思います。

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