「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子 日経BP
(一人目の著者の二文字目は本来は上が「土」の「よし」です。失礼いたします)
ブログを書いていると、なかなかうまく書けないことがあります。どのように書けば読者のみなさんに伝わるか、なかなか書くことが思い浮かばない、といった悩みもあります。
そういったことを教えてくれる「文章術」の本も、たくさん出版されています。私もこれまで、数多くの「書くこと」についての本を読んできました。
それが私の文章にきちんと生かされているかどうかはさておき、様々なポイントを教えてくれます。
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今回ご紹介する本は、そんな文章術についての、レビュー(多くの関連文書を調査し、読み込み、評価し、まとめた文書)といってもいい一冊です。
文章術に関する本、なんと100冊から、文章術のエッセンスとなるようなポイントを盛り込んで説明されています。
そういった本からの引用も含めて、「文章の書き方・大事な順」のランキングとして書かれており、これ一冊を読めば、文章術については、網羅しているのではないかと思います。
一般的な文書やレポートの他にも、メール、チャット、ブログなどを書くことに役立つでしょう。
さらに、仕事の場でよく書く機会のある提案書や企画書、研究計画書、あるいは論文や診療情報提供書(紹介状)の作成にも役立つ良書だと思います。
もちろん、各種「文章術」の本にあたり、著者の考え方から実際の書き方まで深く当たることも勉強になります。
しかし、この本を読めば、効率よくポイントを押さえることができます。
逆三角形型は「結論を先に述べる型」です。
書き進めるほど重要度が低くなるため、「逆三角形」と呼ばれています。
この型の基本は、「結論→説明」です。(P28)
PREP法は、逆三角形型と同様に「結論が先」です。PREPとは、「Point・Reason・Example・Point」の略です。(P30)
伝わりやすい文章の構成として、「逆三角形型」と「PREP法」が紹介されています。これらは文書作成のみならず、プレゼンでも使えると思います。
たとえば、我々の中では自他の勉強のために論文を読み込んで、紹介する抄読会というものがあります。
論文を読み込んで、自分で理解するのも大変ですが、その内容を聞いている人たちにわかりやすく伝えるのも、一苦労です。
まとめ方にもいろいろあるとは思いますが、この「逆三角形型」も一つだと思います。
まず、その論文の結論を言ってしまうわけです。論文などにある「抄録(Abstract)」は、論文全体をまとめて、理解を促し、内容を受けとりやすくするという意味もあると思います。
この論文ではこういうことを言いたいのだ、と。とくに結論を言ってしまうのがいいと思います。
結論を言ってしまうと、聞いている人達は、「なぜそういう結論が言えるのだろう?」と、その根拠となった内容や、本当に根拠となるのかなど、内容の説明に対しても少し構えて聞いてくれると思います
逆に、結論を最後に持ってきてしまうと、この内容はどういうことにつながるのだろう、結論を理解するために覚えておいた方がいいのだろうか、と不安も生じるかもしれません。
あらかじめ聴衆や読者にクサビを打つというか、足場を作ってあげるわけですね。安心して内容を進んでいくことができるように。
文章は必ず「推敲」する
Point
1 時間を置いて読み直す
2 あえてプリントアウトして読み直す
3 声に出して読み直す
4 他人に読んでもらう
(P50)
自分の書いた文章は、できれば時間を置いて読み直すと、いろいろ気づくことがあります。
誤字や脱字もそうですが、「内容的にこれは言い過ぎかな」とか「ちょっとくどいかな」と感じることがあります。また、全体的な流れやレイアウトも感じやすいでしょう。
とくに、夜に書いた文章は注意です。夜は気分も乗っている(あるいは疲れている)ことがありますので、翌朝、覚めた目でみてみると、「なんだこれは」と感じることもあります。
また、プリントアウトして読み直すことも、また違った見方を与えてくれます。紙を手で持つことによって身体全体で読むような姿勢となり、より密接に読むことができる気がします。
声に出したり、他人に読んでもらったりすることも、自分の文章をより客観的に見る(見てもらう)ことができるでしょう。
思いつきはメモに、思考はノートにどんどん書く
Point
1 いつでもメモを取れるようにしておく
2 「アイデアの浮かびやすさ」は場所によって違う
3 書き出したメモやノートを整理して文を組み立てる
(P86)
私もカバンには小さいノートを入れています。なにか、思いついたときに書き込むことができるようにしています。
その際、1ページを大きく使うつもりで、思いついたことを真ん中(やや上)に書いて、その周りにつながって思いついたことなどを書き込むようにしています。
そのことについて、後日気づいたり、新たなつながりが出てきたりすることもありますから、後から書き込むのです。
付箋もいろいろなところにありますので、とっさのメモに使えます。最近はスマホで音声入力もできますので、車の停車中などでも比較的長い文章を打ち込んでおくことができます。
以外と運転中にも、いろいろなことを思いつくものです。
私もこのようにノートやメモを取っておいて、あとで見直してみて、なにかしら文章になりそうなネタであれば、このブログに書き込んだりしています。
「は」と「が」を使い分ける
Point
1 「は」はすでにわかっていること、「が」はわかっていないことに使う
2 「は」がついても、守護になるとは限らない
3 「・・・が」を使っていいのは「逆接」のときだけ
(P142)
格助詞としての「は」「が」は、なかなか使い分けが難しいものです。どっちでもいいような場合もありますが、厳密には上のような使い分けがあるようです。
「は」は一般的なことをいう感じがして、「が」は限定的なことをいう感じもします。
・私はりんごは好きです・・・他の果物も好きなのかもしれない
・私はりんごが好きです・・・果物の中で一番好きなのかもしれない
また、接続助詞としての「が」はクセモノです。ついつい多用してしまいます。使い安いのですね。
・高齢化社会が進んでいるが、実際に高齢者特有の社会問題が増えている。
・ご紹介いただきましたAさんですが、引き続き当院で経過観察させていただきます。
・例の件ですが、私は延期したほうがいいと思います。
などなど
「逆接」のときだけ使いましょう、となると、上記の3つの文章はあまり「が」の使い方としてはふさわしくないようです。
・午後から雨が降ったが、傘を持っていなかった。
・病気になったが、今は元気に過ごしている。
・薦められた本を読んだが、難しくて理解できなかった。
こういった使い方なら、いいのでしょう。
言語は、コミュニケーションのツールであると同時に、思考のツールでもあります。書くことは、伝達手段であると同時に、思考の手段でもあります。(P178)
「言葉」には様々な役割があります。話す、書くといったコミュニケーション手段としての役割がメインです。
そのほかにも、自分の頭の中でもやもやしている思考やアイデアを言葉にすることによって、実体とまではいかないまでも固定されたものにする役割もあると思います。
固定されることによって、やや表現の幅は限られるかもしれませんが、扱い安くなりますし、他人にも伝えることができるようになります。
こうやって、本を読んでからそれを紹介しようと文章を書いていても、「なぜ自分はこの部分を引用したんだろう」「この引用したところは何を言いたいんだろう」と考えます。
このように、書くことは自分の思考を深め、理解を深めることにもつながります。
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文章を磨くには、本をたくさん読むことも必要でしょうが、こういった本でポイントをつかむことも必要と思います。
この本は文章術に関する本を数多く引用しており、そこから気になる文章術の本を実際に入手して読んでみるのもいいでしょう。
自分の文章力向上に益するところはないか、ときどき見返してみようと思う本です。