ある技術をできるようになるには、4つの段階があると言われます。次のごとくです。
- 意識していなくて、できない
- 意識していて、できない
- 意識していて、できる
- 意識していなくて、できる
新しい技術を修得しようとしたとき、最初はだれでも、やり方もしらず、もちろんできない段階です。
まずはどのようにすればいいのか、注意点は何かなど、教科書を見たり、先輩がやっている姿をみたりして、知ろうとします。
そうすると、ある程度勉強して、やり方や注意点は知ったが、まだ実際にはできない状態に進みます。つまり、やり方を意識することはできますが、まだ実行できない状態です。
その段階では、まだ体のほうが頭で考えたように動かないこともありますし、思ったように進められないことや思わぬ失敗が起こることもあり、反省の機会を得ることもあります。そういったことも吸収していきます。
経験を積んでいくと、やり方を知っていて、そのやり方を意識しながらうまくできる状態に移ります。教科書に書いてあったこと、先輩が言っていたことはこういうことだったのか、と感じながら、進めることができます。
そして、さらに経験を積んで、ときには失敗して反省して、やり方を意識せずともスムーズにできる状態になります。
この段階になると、自分で工夫して教科書に書いてあった以上の効率の良さで進めることができたり、なんとなく「コツ」がつかめてきたりします。
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たとえば自転車の練習を考えてみます。まずは座り方や立ち方、ハンドルやブレーキの扱い方、バランスのとり方などを教えてもらいます。
知識としては頭に入りますが、それですぐに自転車に乗れるわけではありません。何回か転びつつも練習を続けていくと、一つ一つの動作を意識して注意しながら、自転車を進めることができるようになります。
そして慣れてくると、手の具合や足の動き、バランスなどを意識せずとも、スイスイと乗れるようになります。
ペダルをこぐ際の足への力の入れ方など、どこにも書いていなかったことに気づいて、自分の身体にあった自転車の乗り方が分かってきます。
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手術についても同様です。最初は一所懸命に教科書などで手順を覚えます。先輩の指導のもと、手術の経験を積み重ねます。慣れてくれば、定型的なことは問題なく進められるようになります。
さらに経験を積んでいくと、道具を持ったときの感覚、組織を触ったときの感覚など、自分だけが感じられる、他の人が「言葉にしようとしても難しいこと」も、なんとなく実感できるようになります。
「言葉にしようとしても難しいこと」、自分では「こうするといい」と感じつつ、教科書にも書いていなかったこと。いわゆる「暗黙知」の要素を含むものかもしれません。
こういったものを、自分の中に蓄積しつつ、なんとか「言葉」にして、記録しておくと良いと思います。