仕事のテコ入れ

レバレッジ・シンキング 本田直之 東洋経済新報社

以前、『レバレッジ・リーディング』をご紹介いたしました。今回は、「シンキング」つまり「考え方」のレバレッジです。

一生懸命働いても成果が上がらないことがあります。また、多くの仕事をこなしながらも時間的・精神的に余裕を持ち、なお成果を上げている人もいます。

著者はこの違いの原因を4つの分野、つまり「労力」「時間」「知識」「人脈」に対する考え方に分けて、それぞれについて「自己投資」を行うことを勧めています。

これらに対する「自己投資術」として、「知識」に対しては『レバレッジ・リーディング』で、「時間」に対しては『レバレッジ時間術―ノーリスク・ハイリターンの成功原則』という著書で詳しく説明されていました。

今回ご紹介する本は、それらの「上位概念」となるものということで、仕事で大事な4つの考え方それぞれについてのレバレッジが述べられています。

少しの労力で効率よく物事を動かす「てこ=レバレッジ」の考え方を勉強して、日々の仕事に生かせるようにしましょう。

パーソナルキャピタルを増やすには、一定量の仕事経験が必要になるということです。新入社員が、「わたしは効率重視なので九時から十七時までしか働きません」と帰ってしまったら、いっこうに成果は上がらないでしょう。このように、余裕時間をつくることだけしか考えないのではなく、成果が上がるから余裕時間ができるようになるのです。そして、余裕時間を投資に回すことでさらに時間が生まれ、一対一が一対無限大へとなるのです。

(P25)

仕事は「業務+修練」だと思います。

前も書きましたが、仕事の報酬として業務から得られるのが給与であり、修練の成分から得られるのが成長などです。

成長としては、知識や技術はもちろん、仕事を介してなされた人付き合いからは、人間性についての成長も得られます。

さらに、上のような成長を身に付け、ある程度仕事ができるようになると、さらに仕事を任せてもらえたり、自分のしたい仕事ができるという選択肢が増えたりします。

仕事に対して給与を得るためだけの手段と考えると、なかなか大変です。そうではなくて、仕事は自分を成長させてくれて、さらなる可能性をもたらしてくれるものと考えましょう。

さて、こういった成長は、定時の間に効率を上げて働くだけでは、なかなか得られないと思います。もちろん、効率を上げる工夫や勉強、熟練によっても成長はあるとは思います。

しかし、ルーチンの業務を効率よく行うことだけからは、得られる成長は限られるのではないでしょうか。

たしかに定時に仕事を済ませて、余裕時間を作り、読書やスポーツ、趣味など自分への投資に充てるという考えは正しいと思います。

しかし、「業務」の部分の仕事をこなすだけでは、能力の効率的な向上は望めず、「修練」の部分の仕事をいかに行うかが、能力向上に結びついてくると思います。

たいてい、「業務」仕事は、行うべき内容が決まっていて、とくに自分で考えたり工夫したりして行うことは少ないことが多いです。

それに対して「修練」と考えられる仕事は、これは自分から積極的に「やります!」と迫っていかないと与えられないことも多いですが、自分で工夫してみたり、人との相談が大事だったりして、まだ見ぬ自分の能力を発見・開発する機会にもなると思います。

そうやって、仕事能力を上げれば、「業務」仕事もスムーズにこなすことができるようになり、「余裕時間」が生まれるのです。

その「余裕時間」を使って、さらなる修練でも、心身のメインテナンスでもするのが良いでしょう。

読むことが重要なわけではなく、情報をどのように実践で役立てるかが大切なのです。行動することで知恵はブラッシュアップされ、選択肢も増えていきます。されにそれをどうお金に換えるかということが重要なのです。

(P133)

知識のレバレッジについて。読書をして、その内容を実践してこそレバレッジがかかるということです。

これはつまり、「知識」を実生活で役立てることのできる「知恵」に昇華するということでしょう。

そのためには、読書をして「これはいい!」と思った内容をメモなどにまとめ、繰り返し読んで行動できるようにするのです。

私も、読書のさいにはその都度付箋を貼っておいて、主に読了後にその付箋の部分をワープロソフトで書き出しておきます。

その後、自分なりの解釈や実体験との関連・相違を書き込んだりして、まとまったものはこういったブログに紹介しています。

多読をひけらかす人もいますが(私のように)、いくら読んでもその内容が日常に生きていなければあまり読んだ意味はないのです。読書は読んだ数ではなく、いかに実践できているかが重要なのです。

そう言った意味では、たとえば古典をなにか一冊しか読んでいなくとも、その内容を日々の仕事や生活に全く生かしている人は、理想的な読書をしているといえるでしょう。

今ほど本の無い、幕末の志士などは、そういった感じだったのかもしれません。

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「てこの原理」はアルキメデスの偉大な発見であり、彼は「我に支点を与えよ。さすれば地球をも動かしてみせよう」という有名な言葉を残したといいます。

日々の生活や仕事においては、「考え方」次第で効果的に物事が進んだり、反対に進まなかったりすることがあります。

今回ご紹介した『レバレッジ・シンキング』は、そんな「考え方」に「てこ=レバレッジの原理」を応用し、効果的に考えられるようにする方法が満載です。

一方、「てこ」には支点が必要です。アルキメデスも地球を動かすのであれば、それなりに「しっかりした」支点が必要と考えたようです。

また、地球ほどの大きなモノを動かすのであれば、ものすごく長くて丈夫な「棒」も必要です。そういった「しっかりした支点」と「ものすごく長くて丈夫な棒」が揃えばの話です。なければ動かせません。

本当に、小さな岩でさえも、しっかりした支点と十分に長い丈夫な棒がなければ「てこ」で動かすことはできないのです。

仕事や生き方に対する「てこの原理」としては、「支点」をその人の「基本的な性質」、「棒」を「知識、技術」と考えるといいのかもしれません。

つまり、「考え方」をテコ入れ=レバレッジするにしても、基本的な「人間性」や「技術、知識」がなければ、うまく動かすことができないわけです。

要するに、基本的な修練で「技術や知識」を蓄え、それを活かすための「人間性」、「人間心理の洞察」、西田幾多郎の言う「善」のようなものもしっかり身に付ければ、効果的な「考え方」ができるということではないでしょうか。

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