人は「下座行」で磨かれる

2020年4月16日

掃除道 鍵山秀三郎 PHP文庫

鍵山秀三郎氏は、自動車部品販売で有名なイエローハットの創業者です。

氏の「凡事徹底」や「掃除道」といった考え方は、とくに大企業の経営者や様々な施設の長に浸透し、赤字経営の改善や職場環境の改善に力を発揮しています。

この本は、氏が「掃除道」を元にかかわられた様々な企業や学校、病院において、どのようなことに力をいれて、どのように改善したかの実例を紹介しています。

「掃除」という日常で大事ではあるけれど、一番下座ともいえる(この考えもひっかかりますが)仕事を、企業などのトップがすることによって、どうなるのか。

自分自身の変革はもとより、周囲の同僚や部下、職場の人々にどのような影響を与え、職場自体が良くなっていったかが書かれています。

自己変革、組織変革の要点は、下座行にあるという一面を教えてくれる一冊です、

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「整理」「整頓」を徹底しますと、仕事の「効率」があがるようになります。また「清掃」「清潔」を徹底しますと、仕事の「質」があがるようになります。さらに「躾」が定着しますと、「社風」がよくなります。(P120)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「5S」として、よく職場などに掲示してあります。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」です。

「整理」は必要なもの、不要なものを分別し、不要なものは処分することです。モノを減らすわけです。

冷蔵庫であれば、期限切れの食材は捨てるとか、職場であれば不要になった資料を破棄するなどでしょう。

「整頓」は残った必要なものを分類、並べ替えなどして、使いたい時にいつでも使えて使いやすいようにしておくことです。

冷蔵庫であればマヨネーズやケチャップや豆板醤など調味料系はこの棚、などとまとめておくことや、職場であれば資料を内容に応じてファイリングするなどでしょう。

これらで冷蔵庫を長くあけて探したり、いらない資料の山から必要な資料を探したりすることが減り、仕事はスムーズになります。

「清掃」「清潔」は環境を整え、見た目も美しくなります。よく、落書きが一カ所あると他にも落書きが増えるという話もありますが、少しでも汚れた所があると、人の心はすさんでしまうものです(個人差もありますが)。

まさに、「清掃」は人の心もきれいにする行為だと思います。きれいな場所で過ごす人々もそうですが、「清掃」を行った人そのものも、心がきれいになるのでしょう。

よく、食器洗いなどしていると、自然に自分の手もきれいになりますが(荒れることもありますが)、これと同じことだと思います。

「躾」は、心がけの問題です。これは、子どものころは周囲から働きかけることも必要ですが、大人になったらあまり上から言われて身につけるものでもないと思います。

各人で勉強して、気をつけることかと思います。仕事や日常生活、読書を通してですね(テレビでも映画でもいいですが)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

しかし、人間というのは、そうした抵抗を超えていくことで心が鍛えられ、より成長できるものだと思います。ですから、吸殻を一日に少しずつでも拾って歩けば、そのたびに大きな勇気が得られることになります。(P239)

「下座は一切のものを包容する」(西田天香)

本書に一貫して流れているメッセージは、まさにこの言葉に集約されるのではないかと思います。(P267)

~~~~~~~~~~~~~~~~

森信三先生もおっしゃっています。

“世間がその人の真価を認めず、よってその位置がその人の真価よりはるかに低くても、それをもって、かえって自己を磨く最適の場所と心得て、不平不満の色を人に示さず、わが仕事に精進するのであります。これを「下座を行ずる」というわけです。(修身教授録 P417)”

自分はもっと能力があるのに、雑務ばかり押し付けられてやる気が出ない。あるいは、自分の日頃のがんばりが評価されていない、などと感じることもあるでしょう。

しかし、たとえば評価されて上の立場に昇進すると、その立場に応じた仕事は増える一方、雑務は減ることもあります。それだけ「自分を磨く下座の仕事」が減ることにもなります。

もちろん、人間的にも順調に向上していればいいのですが、人間学の勉強は一生続くものであり、かえって上の立場になるとおろそかになりがちです。

いつまでも下の立場でいるのがいいというわけではありません。まっとうに仕事をしていれば、徐々に昇進はしていくのでしょう。

ただ、そうなったとしても下座行の大切さを忘れず、自分もできる範囲で行うとか、部下や後輩が雑務に飲まれているときに、その大切さを教えたり手伝ったりできればと思います。

******************

廊下のゴミを拾ってゴミ箱に捨てるのは、なかなか難しいです。だれも周囲にいないときに一度やってみましたが、ぞろぞろと皆が通り過ぎるなか、自分が拾って捨てるというのは、なかなかできないものです。

私が職場のトイレ掃除をするわけにはいかないと思いますが(してもいいと思いますが)、トイレ掃除をしてくださっている掃除のおばちゃん(おじちゃん)に挨拶をするなど、できることはあると考えます。

トイレ掃除に限らず、イスをそろえることや机の上を整理するなど、何かしらできることはあるかと思います。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。