伏線は豊かに

子どもの能力が伸びるマインクラフトの使い方 タツナミシュウイチ ポプラ新書

まあ、うちの子ども達を見ていても、いろいろなゲームにはまっています。宿題との時間関係など問題もありますが、何事も没頭して追究することは良いことです。

かくいう私も子どもの頃はゲームにはまり、親の目を盗んでゲームしていた経験もありますので、自分の子ども達にも大きなことは言えません。

むしろ、そのくらいゲームしてきて良かったと思っているくらいです。ゲームからは様々な学びがあると思っています。

ゲームからは言葉や知識を得ることもできます。心を打つストーリーや人間感情の機微を、小説並みに経験することもできます。虫取りや川遊び等ともども、ゲームでの没入感も得難いものです。

私の音楽への入門もゲーム音楽からでしたね。ゲームで経験したことは、様々な“伏線”となり、後の人生において踏み台となり、ドアノブとなり、バネとなった気がします。

今回ご紹介する本は、『マインクラフト』という世界的に有名なゲームについて、その面白さはもとより「子どもの能力を伸ばす」使い方という視点で語られています。

著者は日本で最初のプロマインクラフターとのことで、マインクラフト歴14年の通称「マイクラおじさん」だそうです。

ゲーム好きだといってもプロゲーマーになることは至難の道ですが、好きなことをしてそれで仕事になって生きていらっしゃるようなステキな生き方ですね。

うちの子ども達もこのマインクラフトで実際に遊んでいて、私も横から見たりすることもあります。自由に建物や構造物を創ることができて楽しそうです。バーチャル世界を歩き、冒険する楽しさもあるようです。

私もつられてプレイしてみたことがありました。少し歩いてウロウロして、水に落ちて脱出することができず「あなたはしんでしまった」となった記憶があります。

その後は見る専門になっています。マイクラ歴14年には遠く及ばない、マイクラ歴14分といった感じですね。

ともかく、ゲームし過ぎて宿題や勉強しないことはダメですが、ほどよくゲームすることによって勉強になる、という私の持論を後押ししてくれる、楽しい本でした。

言ってみれば、マインクラフトとは、いつか回収する伏線を張りまくれる遊びなのです。その伏線は、今はまだない職業に就こうとするとき、世の中に新しい変化を起こそうとするとき、はたまた、疲れ切って何もする気になれないときなど、今からは想像しえない場面でこそ、輝くはずです。(P225)

本来、勉強というのはそういうものなのではないかな、と思いました。つまり、さまざまな経験からちょっとずつ自分の人生に役立つようなことを学んでいく、つまり“伏線”を張っていくということ。

小学校の算数や理科、社会など、ある程度は実生活に直結して役立つと感じられる勉強はあります。

でも、数学や生物学、歴史などになってくると、そうでもありません。勉強しながら、「これが何の役に立つの?」と思うこともしばしばです。

数学者になるのでなければ数学など勉強しなくていいのでは、生物学者になるわけではないから生物学なんて知らなくていいのでは。まあ、受験科目だから仕方ないけど、などと考えることもあります。

新学習指導要領のベースを築いたキーパーソンである田村学氏の著書『深い学び』に、このようなことが書いてありました。

各教科等の固有の学びの有り様を端的に示してみるならば、以下のようなイメージをもつことができる。

国語科であれば、言葉や文章に目を向けて、言葉の意味を問い直し自覚すること。社会科であれば、社会事象に目を向けて、社会の機能を追求すること。算数科や数学科であれば、数理に目を向けて、論理的に考えること。理科であれば、自然事象に目を向けて、科学的に探究すること、などである。(『深い学び』田村学 P32)

教科そのものの知識や考え方を取り入れる一方、いかに様々な事象から抽象化した考え方、捉え方を身に付け、本質のようなものをつかむことができるか、というところが大切かと思います。

数学が好きだから数学者になるとか、生物が好きだから生物学者になるとか、体育が好きだからスポーツ選手になるとかではなくて、もちろんそれもアリですけれど。

それぞれの教科からその教科特有の考え方や捉え方といった、将来べつな機会に意識的あるいは無意識的に役立つような“伏線”をたくさん収集しておくことが、勉強だと思います。

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想定内への対応は、想定していた考え方や捉え方、対処法で対応すれば良いので比較的楽です。しかし、今後ますます必要とされるのは想定外の事態への対応です。

想定外への対応はそれまでの人生や勉強から身に付けた考え方の断片を活かして対応する必要があります。さらに、今後はまだ見ぬ職業も増えるでしょうし、新しい変化も起こり、起こさなければならない場面もあるでしょう。

そういった状況に直面したときに役立つような考え方や捉え方の断片を、様々な勉強や経験、ときにはゲームも通して仕入れておくことが大切ですね。

そして、想定外の事態にもそういった断片で上手く対処することができたとき、かつて勉強で学んだこと、ゲームで経験したことは“伏線”として回収されるのでしょう。

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