ウォーキングの科学 能勢博 講談社ブルーバックス
最近、ウォーキングをがんばっています。歩くこと自体は昨年5月ごろから始めました。1日4-5kmくらい、40-60分くらいで歩いています。
もちろん、仕事や家庭の都合、あるいは天候などによってはできないこともあります。でも、できるだけ歩く習慣は続けるようにしています。
さて、今年も健康診断の時期が近付いてきたので、かなり久しぶりに体重を計ってみますと、! 昨年の今ごろよりも2kgくらい増えているような気がします。
そういえば、ベルトも少しきつい気がしました。歩く習慣は続けていても、確実に老化する身体にはせいぜい現状維持程度の効果しかなかったのかもしれません。
これは困った。せめて今年の健康診断で昨年より体重が異常に増えていないくらいにはもっていかなければ。
そう思い、歩くにしてもいかに効率よく、つまり負荷をかけてカロリーを消費するような歩き方をしよう、と思って手にしたのがこの本です。
この本は、もちろんハウツーとしての効果的な歩き方を教えてくれます。それだけではなく、その根拠となる科学的なデータや実績を、著者の長年の研究に基づいて説明してくれます。
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ふむふむ、そういう歩き方がいいのだな。よく分かりました。さっそく取り入れました。体重曲線も下降してくれます。
最近は行き過ぎて途中で走ることも取り入れています。それにしても、この本の歩き方は効果的であることが実感できました。
さらに、いかに自分の身体を生涯大切にしていくかはもちろん、他人に対して身体を大切にしてもらうためにはどうしたらよいか、という難しい点についても、この本では提示してくれています。
自分の、そして大切な人の健康で楽しい生涯を送ることができるようにするため、ぜひ皆さんも読んでみてください。
患者さんが、がんの再発を予防するために何か自らできることはないかと医師に尋ねると、大抵の医師は、とりあえず何もない、定期健診にきて、後は自分に任せてくださいと答えるそうだ。その結果、自分の人生を医師に握られてしまった、という印象を持ち、いつもがんの再発を気にして、積極的に自分の人生を切り開く意欲をなくしてしまう、ということだ。(P185)
人は、積極的に能動的に自分の人生をなんとかしようという気持ちがあると思います。いかに一時の快楽に溺れたり不健康な生活を送ったりして生活習慣病になったとしても、できれば状況を改善して健康に楽しく生きたいと思うでしょう。
私たち医療者は多くの患者さんを相手にさせていただき、生活習慣が悪くて生活習慣病になる人もいれば、けしてそうではなくても病を発症してしまう人もいることが分かります。
いずれにしても、健康は失われてはじめてその大切さが分かることが多いものではないでしょうか。
そして、病からなんとか急場をしのいで退院することができ、外来通院で経過を見ることができる状態になったとき、「では、今後はどのように気を付けたら良いのか」と考えるに違いありません。
退院時の説明などで、私たち医療者もそのような助言を求められることが多々あります。もちろん患者さんの病気に関する専門的な助言を行ったり、一般的な健康のための指導を行ったりします。
しかし、なんとなく定型的なことを言って済ませてしまうことも多い気がします。たとえば「食事や運動に気を付けて過ごしてくださいね」など。
塩分や脂肪分のとり過ぎに注意することや、運動についてもウォーキングを勧めるといって具体的なことはお話しています。
それでも、ここで引用したように、ある程度は自然に任せるしかない、なんとなく発症するときはする、再発するときはする、人による、などということしか言えないこともあります。
そこでお勧めするのがこの本に書いてあるようなウォーキングですね。ウォーキングは体力向上や身体機能の向上のみならず、免疫系も向上させることで病気の発症や再発を抑える効果も期待できるそうです。
なんとなく良さそうだから運動を勧める、ではありませんね。運動は、とくにこの本で勧められているようなウォーキングは、健康を維持したい人、病気の再発に対して自分から積極的能動的になんとかしたい人にとって、大きな手段となります。
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陰陽図が「陽きわまりて陰を生ず」ように、健康のうちに病気のタネは生じます。健康なうちに病気の予防を考えておくことが、健康的にも経済的にもだんぜん得です。
たとえばアルツハイマー病といった認知症の代表的な疾患についても、その原因物質は40代ころから身体に蓄積し始めると聞きます。
なってから騒いでも、たいていは対症療法的な対応しかできません。若くて元気な気がするうちから、将来もその元気を続けることができるように手を打っておきましょう。
そのためには、読書、睡眠、そして運動ですね。