戦略と情熱で仕事をつくる 松永直樹 ダイヤモンド社
今回ご紹介する本は、自分の好きなことを追求し、ついには社会に貢献できる仕事にまでしてしまった著者によるものです。
好きなことを仕事にできるほど幸せなことはないと思います。どうしても、「好きなことを仕事にできるほど世の中は甘くない」という意見が多いと思います。
著者は「ボードゲームソムリエ」の肩書を持ち、子供のころに『人生ゲーム®』と出会ったことをきっかけに、大学でもボードゲームの活動に勤しみ、自作のボードゲームを展開したり、その魅力を多くの人々に提供したりしています。
ボードゲームが子供のころから好きだという「情熱」と、そのボードゲームでいかにお金をもらい、社会の中で生き抜いていくかという「戦略」で、いままでにない新しい自分の仕事を作ってしまいました。
みなさんも「好きなことで生きていく」ができればいいなと思っても今従事している仕事を、転職などですっきり変えてしまうことは難しいと思うでしょう。
しかし、その考え方に触れれば、自分がやっている職業の仕事を、新しい見方で見ることができたり、新たな企画や仕事内容を作るきっかけになったりするのではないかと思います。
強みを見つけるための方法は、いろんな方法があると思います。好きでどうしてもやってしまうようなことは何か。それを知るために良いのは、自分の幼少期を振り返ることです。あなたは、どんなことで遊んで、何をすることが好きな子供だったか。
(P127)
やはり、「原体験」というのが大切なのだと思います。自分の本当にやりたいこと、好きなことが何なのかということです。
それを、この著者のようにそのまま仕事にできればいいですが、全ての仕事でそんなふうにできるわけではないので、少しでも今やっている仕事で生かせればいいと思います。
子供のころに好きだったことと、今の仕事の内容が、抽象的な部分でつながっているということもあると思います。
たとえば、子供のころに折り紙など細かい作業が得意であれば、仕事でも精密な作業やじっくり集中して作業することができるかもしれません。
自分が子供のころに何を好きだったかを振り返ることで、今の仕事の中でどのような面を活かしていけるか、気づくことがあるかもしれません。
逆に、我が子がいらっしゃる方は、その子供がどういったことに興味を持って、楽しく遊んでいるかをじっくり観察しましょう。
そして、将来何か進路などで迷っていたら、小さい時のことを思い出して、「こういうのはどう?」などと助言してみるのもいいかと思います。
もし、あなたの活動や発信にケチをつける人が現れたら、それは行動し、目立っているということ。批判や意見が届いたときは、「よし、この人の目に届く行動を起こすことができたんだ」とポジティブに考えるといいと思います。
(P169)
「出る杭は打たれる」とよく言われます。でも、出なければ自分の思うように仕事はできないし、打たれることで土台がしっかりしたり、反省してより仕事に磨きがかかったりします。
むしろ「出ない」ようにと考えて、事なかれ主義と言いますか、言われたことをやるだけでは、自分の成長も望めないし、あまり仕事も面白くないと思います。
まずは批判されるという気持ちで(逆に全然準備していなくて本当に批判されるだけでは困りますが)、新しい企画や研究を提案するのがいいと思います。
批判や失敗は、自分が成長するチャンスととらえましょう。
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すでに多くの人が参入している競争の激しい分野をレッドオーシャンと、まだ参入している人が少なく競争の少ない分野をブルーオーシャンと呼び、市場の様子を分けて考えることがあります。
ブルーオーシャンを狙うのが商機なのですが、そこも次第にレッドオーシャンに変化していってしまいます。
著者は、そのどちらでもなく、「ブラックオーシャン」という、まさに深海の底の底のように誰もまだ見たことのない世界での仕事を始めたのでした。
前例がなく、環境としても過酷ですが、「好きなことである」という「情熱」と、いかにしてこの仕事で生きていくかという「戦略」が立てられれば、もしかしたら熱水鉱床のような豊かな資源やアイデアが見つかるかもしれません。
これは何も職業ごとの違いではなく、一つの職業でも、その内容によっては、まだ誰もやったことのないことを考えればいいという点で、示唆に富んだことだと思います。
レッド、ブルー→レッドのひしめく自分の仕事の世界でも、自分に合った仕事、深層のブラックオーシャンのような仕事に巡り会うカギは、「好きなこと」という「情熱」なのかもしれません。