ネガティブ心理の効用

一流は知っている!ネガティブ思考力 榎本博明 幻冬舎

どうも、グチを言ったり悪態をついたり、毒を吐くことが苦手である。

(そんなこと言っておいて、自分で気づいていないだけで、場合や聞く人によっては十分悪態を言っているかもしれません、とくに家中では。また、口では言わなくても態度がどう見ても悪態を呈しているとしか見えないこともあるかと思います・・・悪しからず)

基本的にネガティブなことを言うのは嫌いだ。ネガティブなことを口にすると、心がネガティブになると信じ込んでいる。

世間の人も、ネガティブなことはなるべく言いたくないのではないか。

はたして、ネガティブな発言とはどのような性質のものであろうか。少しまとめてみた。

<デメリットのようなもの>

・言霊文化、縁起・・・まさにネガティブなことを口にすると、自身や周囲に悪い影響が出る。また、ネガティブな言葉は「縁起でもない」から言わない方がいい場合が多い。

・自分の心に悪い、身体に悪い・・・心の状態としては、より悪い方向に進むのではないか。また、身体にとってもよりストレスがかかるのではないか。「言葉」が人をつくるといういうし。

・「人を呪わば穴二つ」・・・これは、昔から言われている。とくに修験者などで、呪詛を用いて相手を呪い、死を願うようなことをすると、自分もそうなりますよということ。二人分の墓穴が必要になる。

・よりネガティブになる・・・ネガティブな感情を持ってネガティブなことをいうと、感情はますますネガティブになるだろう。

・自分はどうなんだ?と思ってしまう・・・たとえば他人の悪口、批判を言う。そうしたときに、では自分はそんなに立派にできているの?そんなに言えるほど自分はがんばっているのか?という疑問が、まるで真空から電子と陽電子が生まれるように同時発生する。

・怒ると周囲も雰囲気が悪くなる、自分の気持ちも悪くなる。建設的な方向に進むことは少ない。

・キャラじゃない・・・もともとそういうキャラじゃないので無理して言うものでもないと思っている。

・「人は清浄なものを口から入れるが、口から出すものは不浄なものばかりである」・・・だれかの言った言葉である。

<メリットのようなもの>

・ストレス発散。気分が晴れる・・・グチを吐くことによって、気分が晴れる。本当にそうか?(たいていグチを吐き出すと入れ換えに飲み込んでいる酒の効果もあるんだろう)

・同感してくれる人と気が合う・・・聞いている人は、その二人の関係性や勢いなどにもよるが「うんうん」などと聞いてくれるだろう。その場では話を合わせてくれるが、その他の場ではどうか。

・言われた他人が改善される?・・・これは「怒る」などの期待される効果である。しかし、基本的に他人を変えることはできない。「北風と太陽」の話のように、批判的に言うだけが能でもない。

<対策>

・自分のはなった「言葉」に自分が影響されなければいいのではないか。つまり、悪態はついても影響されないようにすればいい。(そんなものは「言葉」ではないような気もする?)

・感情を伴うまでもっていかない、たんたんと語る。

・悪態+持ち上げ、持ち上げてプラスで終わらせる。マイナス→プラス。これは「叱る」ときのポイントの一つでもある。

<結局のところ>

・世の中は善/悪ときっぱり分かれることはない。「二項対立」はありえない。明らかに何かが悪いと思っても、別の面からみたり、見る人によっては悪いだけではないこともある。何事も、善の面もあれば、悪の面もある。光あれば影がある。影があるからこそ光がある。

・とにかく、「グチ、悪態、毒」に限らずポジティブな良い言葉も含めて「言葉」を発することは、人生の振れ幅を増してくれると思う。

・文字や文章もそうだが、発語や会話など「言葉」は、我々が世の中に働きかける手段の一つであり、有力な(無難な)手段である。(他の手段としては、暴力などか・・・)

・なにも「言葉」を発しなければ、平坦な人生だろう。平坦な人生か、起伏のある人生か、好きな方を選べばよい。

・言う人も言われる人も、「ネガティブも毒も受け入れる懐の深さ」が人間力の一つだろう。

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さて、話が長くなってしまったが、そんな中で一冊ご紹介したい。世の中ポジティブ思考がもてはやされているが、それでいいのか? そんな警鐘を鳴らす本だ。

「ポジティブ思考」は成功を導き、夢をかなえ、幸運を呼ぶと言われている。「ネガティブ思考」は悪いもの、気にしなければうまくいく、そして気にしない技術、生き方なんてものもよく言われている。

しかし、世の中「光」のみで成り立っているわけではない。「闇」もまた必要である(「闇」なんて呼ぶと深刻な感じがしてイヤだが)。

ポジティブ心理の危険性とネガティブ心理の活かし方を書いた、一冊である。

新生活が始まって「積極的に、ポジティブにいこう!」などとポジティブ一辺倒で考えているみなさん(そういう面も必要ですが)、ちょっと読んでみていただきたい。

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嫌な気分になりたくないから、嫌なことは振り返らない。気にしない。それは、ポジティブと言えばポジティブだ。だが、そうしたポジティブな心のあり方には落とし穴がある。(P33)

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落とし穴として、行動の修正ができないこと、きめ細やかな準備や対応ができないこと、攻撃的で人の気持ちが分からなくなること、夢をみては転職を繰り返すこと、薄っぺらいのに自信満々であることなどが挙げられている。

また、情報処理プロセスにおいても影響が出やすい。

情報処理には入手可能な情報を慎重に考慮し、じっくり検討する「システマティック処理」と断片的な情報や特定の情報に反応して直感的にすばやく判断する「ヒューリスティック処理」とがあり、ポジティブ心理ではつい後者になってしまうことが多いようだ。

高価なほうが性能が良いのではないか、あの有名人の推薦だから大丈夫だろう、など。

直感(観)も大事であるが、それだけでもいけない。

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・・・ポジティブ信仰が世の中に広まってしまったため、全然無理していない人、限界まで頑張り抜こうとして苦しむといった姿勢とは無縁の人までが、「無理をするのは良くない」「気楽にいくのがいい」と思い込んで、頑張るという心の構えを取れなくなっている。(P90)

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頑張ることが格好悪いことのように見えて、「無理せずにいこう」となりがちである。

しかし、ときには頑張ることも必要だ。

頑張りなんてひけらかすものではないので、格好のことなど考えなくてもよい。陰でこそこそと頑張っていればよい。

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相手の気分を害するような言いにくいことを言って嫌われたくない、といいた保身的な心理で動いている。そのような上司は、ほんとうは部下なんてどうでもいい自己チューな上司ということになる。(P111)

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みんなに好かれたいという心理で、ネガティブなことをなるべく言わないのは間違いで、ビシッと叱るべきことは叱るなど、必要だと思う。

それこそが、かえって相手のためになるのではないか。

逆に上司に気に入られたいために上司に対してネガティブな発言を避けようというのも良くない。清濁併せ吞んでの人付き合いである。

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