読書にいきづまったら

2019年12月30日

本を読めなくなった人のための読書論 若松英輔 亜紀書房

 ビジネス書や自己啓発本の濫読に終始し、数を読むことに入り込んでいた時、自分の読書がこのままでいいのかと悩みました。もちろん、数を読むこと、濫読も必要ですが、個々の本のエッセンスをちゃんと拾えているのか、と感じました。

 古典に戻ってみたり、感銘を受けた本を再読してみたりもしました。そんなとき、この本に出合いました。以前ご紹介した「本を守ろうとする猫の話」とともに、最近の読書姿勢に影響を与え、微妙な方向転換(この積み重ねが大事)をしてくれた本だと思います。

 著者は現代を代表する批評家、随筆家、そして詩人であります。非常に「ことば」を大事にする文章は、読んでいてすんなりと身体に入る気がします。著者のことは「100分de名著 西田幾多郎 善の研究」で知りました。私が西田哲学に突入するきっかけともなりました。

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読む人と書く人が同時に働くとき、私たちは、読むだけの人の眼にはけっして映ることのない、新しい意味を感じ始めます。(P36)

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「書く」ことから始める「読書」

 読書、テレビ、ラジオやインターネットに代表されるインプットは楽なものです。読書についてはある程度の集中力が必要でありますが、後3者については、ほとんど受動的なインプットといえます。受動的であればあるほど、得るものも少ないと思います。

 インプットのなかで幾分能動的ともいえる読書ですが、これもより効率的(こういう考えかたもイヤですが)に行うための一方法として、「アウトプット」を見越して行うというものがあります。

 ただ読むだけでなく、「この内容を人に伝えるとしたらどう伝えよう」とか「この部分についてブログに書くとしたらどう書こう」などと考えながら読むわけです。自然と、気になった部分には付箋をはったり、メモ書きをしたりしながら、あるいは自分がどう思ったか、感じたかを記録しながら読むようになります。

 「書く」ことを意識して「読む」ことは、より理解を深めるための一助となると思います。

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最初からはうまくいかないかもしれませんが、こうした相談を何度か繰り返しているうちに、きっと今を照らす一冊に出会えます。(P64)

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図書館司書

 私は、あまり図書館に行くことはありません。子どもたちは妻と一緒にしばしば図書館に行き、たくさん本を借りてきます。どんどん読んでほしいと思います。

 私の場合は、ある程度手元に本を置いておきたいということもあって、借りてくるというのが、なかなか抵抗があります。「積読」「置読」になってしばらくしてから読み進めたり、読み直すことがありますので、手元に置いておきたいわけです。

 図書館司書という方は、そういうわけであまりお世話になったことがありません。せいぜい探している本がどの辺にあるか聞くくらいです。しかし、いっぱしの職業であり、プロとしてのワザをお持ちと思います。何回かお世話になって、こちらの傾向を分かっていただけるようになると、大変助かるのかもしれません。その辺は、なじみの居酒屋などと共通するでしょうか。

 現在は、司書に限らず本の探索にはネット書店の書評やさまざまな書評サイト・ブログがあり、そちらで本を検討することもできます。しかし、司書という生身の人間が相手であれば、その場その場のこちらの状況や境遇によって、対話から生まれる新たな本との出会いが得られるのかもしれません。

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本を読めなかったとき、私は自分に必要なものを自分の外に探していました。しかし今は、そのほとんど―おそらく、本質的な意味ではそのすべて―は、私たちのなかにもともとあった何かだと感じています。

同質のことは、読書においても起こります。「読む」とは、今日まで生きてきた、すべての経験を通じて、その日、そのときの自分を照らす一つの言葉に出会うことにほかなりません。

読書とは、印刷された文字の奥に、意味の光を感じてみようとすることなのです。読書とは、自分以外の人の書いた言葉を扉にして、未知なる自分に出会うことなのです。(P78)

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自分に必要なものは自分のなかにもともとある

読書とは、言葉を扉にして、未知なる自分に出会うこと

 人により長短はありますが、それぞれのこれまでの人生でも、いろいろなことを経験して勉強してきたと思います。忘れていたと思っても、脳のなかには残っていることもあります。

 読書によって出会う「言葉」は、あるときそういった脳の中に眠っていた記憶や考えを掘り出すきっかけとなり、これまで気づかなかった自分の一面を認識させてくれるものになると思います。

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 読書にいきづまったとき、「書く」に代表される「アウトプット」を少し考えてみたり、自分に当てはめてみたりすることにより、少し読書に対する姿勢や考え方も変わるかもしれません。

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