勉強のしかた

2019年11月10日

「独学の技法」 山口周 ダイヤモンド社

勉強は、等価交換を主体とするビジネスとは異なり、すぐに結果の出ないものです。つまり、コンビニなどでお金を払えばすぐに結果(商品)が得られるが、勉強は結果が出るまで、基本的に長い年月がかかる。はたまた結果は出ないかもしれません。あるいは、本人の気づかないところで出ているのかもしれません。

著者は独学で外資系コンサルとなった経歴をもち、「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」、「NEWTYPE ニュータイプの時代」などこれからの勉強や働き方、生き方を考えるうえで大いに参考になる著書を数多く出しています。

今の勉強がどう役立つのか、役立つ勉強すするためにはどうしたらいいのか、など悩んでいる人があれば、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

以下、いくつかの抜き書きと考えたことを書いておきます。

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学びの始点においては自分が何をしたいのか、何になりたいのかはわからない。

学んだあとに、事後的・回顧的にしか自分がしたことの意味は分からない。それが成長するということなんです。(P46)

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現状を説明する話は、後付けである

学生にもよく聞かれます。なぜ今の仕事をしているのですか、どうやって決めたのですか、と。「興味があった」などと答えているし、実際そうであったことは確かです。しかし、なにか人生の分かれ道で「こっちだ」と確固たる決め手があって決めたわけではないと思います。

今なぜこの仕事をしているかという理由は、今聞かれたからそんなふうに、そうだったかなということを答えているけれど、その時は本当にこれでいいのか分からず、不安もあり、でも「えいっ」と決めたということは、あると思いますね。

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これらの知識を武器にする、いわば「知識」から「知恵」にするためには、こういった生情報を抽象化して「示唆」や「洞察」を引き出すことが必要です。(P54)

「教養主義の罠」に落ちない

ポイントは、教養を「仕事の成果の埋め合わせ」に用いない、ということです。(P132)

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読書による充実を仕事による充実の埋め合わせにしない!

本業そっちのけで読書は良くないし、読書をたくさんして、知識はあるけれど、本業の業績がいまいちというのも良くないと思います。

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抽象化とは、細かい要素を捨ててしまってミソを抜き出すこと、「要するに○○だ」とまとめてしまうことです。モノゴトがどのように動いているか、その仕組み=基本的なメカニズムを抜き出すことです。(P159)

得られた知識は何か?

・その知識の何が面白いのか?

・その知識を他の分野にあてはめるとしたら、どのような示唆や洞察があるか?

これを何度も繰り返しているうちに、個別具体的な情報に接した際に、それを同時に抽象化するという、一種の「頭の使い方のクセ」が身についてきますので、倦まず弛まず、場数を踏むことを心がけてもらえればと思います。(P174)

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学生に対しても、small group teachingなどの機会に細かい疾患の治療法や専門的な最新情報などを教えます。しかし、決してその細かい疾患の治療法や専門的知識を覚えてほしいわけではありません(覚えてくれればうれしいけれど)。

むしろ、その背後にある様々な疾患でも共通することこと(たとえばこういう疾患ってのは遺伝子異常で起きるもんなんだよとか、治療薬の作用機序や副作用など他の疾患でも役に立つことなど)を感じてもらえればと思っています。

個を学んで総を感じる、木をみて森を思うことが、抽象化ということであり、勉強のミソかと思います。試験対策の過去問勉強も、このようにその奥にある共通事項に視線を伸ばしながらできると、いいかと思います。

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