レバレッジ・リーディング 本田直之 東洋経済新報社
読書についての本は、たくさん出版されています。
多読・速読、遅読あるいは積読などといった読書のスタイルに関する本、読書の効果について書いた本、あるいは読書の重要性を説く本など内容もさまざまです。
そういった中で、今回ご紹介する本は、読書についてスタイルから効果、具体的な読書の方法や効果的な読み方まで、年間400冊を読むという読書経験豊富な著者が解説してくれる一冊です。
著者はレバレッジシリーズと呼ばれる著作を数多く手掛けられ、ビジネスシーンから人生の生き方まで幅広い内容で書いておられます。
そういった中でこの本は、読書を続ける人生を考えている方には、ぜひ読んでおいていただきたい本です。
この本を読んで、あなたの読書もテコ入れ(レバレッジ)しましょう。
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読書を単なる読書ではなく、経済的行為、つまり投資活動として捉えているからです。
もちろん、ただふつうに読んだだけでは一〇〇倍になりません。本を読んで得た知識をビジネスに生かすことが絶対条件です。
読書こそ、最強の投資であると断言するゆえんです。(P16)
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読書は投資活動であると著者は断言します。投資はしたことはありませんが、世の中には「お金」を考えた投資以外にも、考えようによっては様々な投資があると思います。
そう言ってはなんですが、子どもを育てるのも、一種の投資なのかもしれません。いや、子育てにお金をかけるというのではなく、親がいろいろ工夫して立派な大人になるように教育するわけです。
そして、もちろん親孝行してくれればうれしいですが、社会の役に立てばと思うのです。
子どもの教育についても、「受益者は子ども自身ではない」ということを、内田樹氏が言っていたと思います。子どもが良い暮らしをするためではなく、社会の役に立つ人間にするための教育である、と。
同様に、読書による自己投資も、受益者は本人であることはもちろんですが、その周囲の家族や同僚、はたまた社会に拡がることは、以前ご紹介した『書斎の鍵』にもあったと思います。
その反面、お金に関わる投資は、ほとんど受益者は投資した本人、あるいはその家族くらいでしょうか。
そういった意味でも、読書は「最強の投資」と言えるでしょう。
もちろん、月に○冊以上読むと月収が☆円上がるなどということは、分りませんし、読んだ人生と読んでいない人生を比較もできませんので、お金の投資のように如実な差を感じることは難しいと思います。
しかし、後でも述べるように、本は書いた人の努力や試行錯誤の結晶であり、そういった事柄を自分の人生ですべて体験することは不可能です。
収入面での人生の豊かさも得られると思いますが、人生そのものの豊かさも得られるのではないでしょうか、読書によって。
また読書のポイントは、得られた知識を実践に活かすことです。知識を、経験を通して実践することにより、生きた知識つまり「知恵」とするわけです。
このあたりの話は、このブログ内でも何回か書いておりますので、ご参照ください。
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汗水たらし、血のにじむような努力をした他の人の数十年分の試行錯誤の軌跡が、ほんの数時間で理解できるよう、本の中には情報が整理されているのです。(P22)
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自己啓発書、ビジネス書は先人の努力や苦労の軌跡と成果を知ることができます。一人の人間が、自分の人生や職業に当って感じたこと、あるいはその解決となったことを、書き記してくださった本です。
個人差はありますから、内容が全員に当てはまるということは無いと思いますが、参考になる話もあるはずです。
また、小説はもう一つの人生を経験できます。自分とはまったく違う考え方、生活の人の生き方、逸話を体験することにより、「自分の生き方はどうだろうか」などと振り返ってみることができるのではないでしょうか。
たとえば、「自分はこの主人公のようにがんばって仕事をしているかなあ」とか、「自分はこの主人公のよりは家族を大事にしているつもりだが、どうだろう」など。
さらに、歴史は過去の出来事、その当事者の考え方を知ることができます。
性質上ある程度「ストーリー」になってしまっているのはしょうがないですが、過去の出来事と、その当時の人物の考え方、結果からの反省を、自分の生き方に活かすことが可能です。
そして、哲学は自分の考えを研ぐ、触媒する道具となります。難解な哲学書も多いですが、読んでいるうちに、自分の思考回路(安易な言い方ですいません)が鍛えられる気がします。
一冊の本を出版するということは、なかなか大変です。本人の努力もありますし、出版しようと手を打った出版社も、よくよく吟味して考えてのことです。これは、我々は論文を書いて公表するときに似ています。
だから、そういったことをくぐり抜けてきた出版物に、どうしようもなくつまらない役に立たないことしか書いていない、ということは滅多にありません。(ときにそう感じる本もありますが、まずは自分の読解力やら何かが不足していると思いましょう)
読んでいて、分らない、進まないとなったら、一度中断して積んでおくのも一つの手です。無理に分からないまま読み進めて、とりあえずさっぱり分からんが読了したぞ、としてしまっては本もかわいそう。意外と他の本を回り道してから、ふと読み返してみると読めたりするものです。
ただし、難しい本を読むことで、こちらの頭も鍛えられるという側面もあります。たいてい難しい本には解説書であるとか、関連書がありますので、そういったものと一緒に読み進めてもいいかと思います。
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ビジネスパーソンの読書は、スポーツ選手にとっての練習だ
練習すればするほど上達するように、読めば読むほど、実践に使えるベースが貯まっていきます。この累積効果により、レベルアップして、仕事ができるようになります。(P28)
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大学を卒業すると、勉強は完了と考えている人もいるかもしれません。
たしかに試験はこれまでの学校生活のようには待ち受けていないし、待ち受けていてもそれに対応した試験勉強をすればなんとかなるだろうと考えます。
しかし、大学までの教育で得た知識で、その後の人生の大部分をうまくやっていけるとは思えません。
むしろ、大学までの教育期間は、人生の中でも特殊な期間だと思います。いくぶん特権的であり、守られており、また勉強さえしていればOKといったことも感じます。
平々凡々と生きていくには、日々のルーチンをこなしていればいいでしょうが、おそらく人間の使命の一つには「自分の生きている世界を良くしながら生きる」というのがあるのではないかと思います。
大げさに考えなくても、日々のルーチン業務も何とか工夫して楽しくできないか、効率よくできないかと考えるものです。
そういった工夫が、職場全体の仕事環境を良くしたり、ひいては社会を良くするわけです。
また、スポーツ選手もそうですが、ある程度の負荷を日常かけていないと、衰えるばかりです。
読書についても、読む経験を積めば積むほど、読書の腕前も上がってきますし、読解力も上昇します。
また、読めば読むほど自分の興味の方向や範囲が広がっていくのも、面白いものです。
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とにかく大事なのは、本から得たノウハウをレバレッジメモにまとめ、繰り返し読んで条件反射的に行動できるようにし、どんどん実践で活用していくことです。読まなければ始まらないのは無論ですが、読んだだけで実行しなければそれで終わりです。(P169)
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キラリと光る部分は付箋をつけたり、傍線を引いたり、抜き書きしておいたりします。そのときに自分なりの、感じたことやコメントなどをつけておくとよいでしょう。
さらに、抜き書きした部分を交えながら、自分の考えもまとめて書くことができると良いと思います。このブログの「本の紹介」の文章は、そのような形式で作成されていることが多いです。
ワープロで打ち込んでおけば、いつでも編集したり取捨選択したりしてプリントできます。それをカバンに持ち歩いて、ちょっとした時に眺めるといいと思います。
そして、いざ読んだことが当てはまる場面があれば、実践してみるわけです。
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とにかく、読書はしたほうがいいです。メリットしかありません。一食くらい抜いても本を買った方がいいこともあります。
私も、昼の時間に昼食に行くか本屋に行くかの勝負では、圧倒的に本屋の勝ち越しです。
もちろん、孔子がのたまわった(この過去形あっているのでしょうか?)、「行い余力あらば、即ち以て文を学べ」に反抗して、本来の仕事をそっちのけで本読みばかりしていてはいけません。本末転倒です。
また、この本のように読書に関する方法論、コツなどを述べた本も多いのは先に述べましたが、そういった本だけ読んでいてもしかたがないと思います。読書法については知識豊富になりますが。
スキーを始めようとするのに、「スキーのすべり方」の本をいろいろ準備して読んでばかりいるようなものです。
まずは、これはと思う本を読んでみて、ときどきまた本の読み方の本も読んでみて、自分なりの本との付き合い方ができていくのだと思います。