読書療法

心と体がラクになる読書セラピー 寺田真理子 Discover

「読書療法」というものが存在することを最近知りました。

○○療法というのは色々あります。手術療法、化学療法、放射線療法といった医療技術的なことから、食事療法、運動療法といった実生活で行うもの。あるいは音楽療法や自然療法、転地療法など芸術や自然の力を使ったものもあるでしょう。

読書療法というのは、この中では音楽療法や運動療法に近いものでしょうか。インプットにより効果を発揮すること、自分で行動して効果を期待するということで。

運動、読書、瞑想は人間が行ってメリットしかない行動と言われています。運動は身体から精神まで幅広く良い方向に向かわせてくれます。瞑想もとくに精神面で過度なストレスやダメージを受けやすい現代において、重要なスキルと考えられます。

瞑想療法という言葉はあまり聞きませんが、マインドフルネスや坐禅、祈り、あるは呼吸法など様々な方法論は今も昔も存在しており、「療法」と呼ばないとしても心身に良い影響を与えることは明らかです。

一方で読書の実利としては、まずは知識を仕入れること、そして小説や文学作品から自分の人生では経験できないことを経験すること、あるいはエンターテインメント的な点があると思います。

しかし読書にも、ストレスを大幅に減少させてくれる効果が知られており、知識や経験を増やすことにより、実世界においても考え方や感じ方の幅や深さを広げてくれる効果があると確信します。

ところで私は最近、「読書指導」という言葉を考えていました。○○指導としては、食事・栄養指導や禁煙指導など、「療法」までも治療行為的ではないとしても、キチンとした専門職による働きかけと感じます。

そして、こういった「指導」は、病気になった方にも行いますが、病気を予防するためにも健康診断などでちょっと引っかかった方や健康な方にも行うことがあります。

治る病気は治るけれど、治らない病気も多く存在するため、やはり病気は予防が大切です。病期の一次予防というものですね。

医者というものは、ともすれば患者さんの症状に応じて薬を処方し、症状の改善を目指すものです。それが必要な場合もある一方で、ポリファーマシーなどと呼ばれ、たくさんの薬を漫然と飲み続けることも問題となっています。

もちろん病気や症状によっては、手術や投薬で病気を取り除いたり進行を抑えたり症状を改善することも必要です。その一方で、患者さん自身の病気に対する抵抗力や生命力を引き出すことも考えるべきだと思います。

そのために、食事や栄養、あるいは運動を指導して体力、抵抗力をつけてもらい、病気の原因となるものを止めるようにがんばってもらう、ということが大切です。

最近、これは本の紹介にも通じるところもあるのではないかと思いました。そういった流れで「読書指導」ということを考えていました。

相手の悩みや要望に応えて、それに合った本を紹介することも素晴らしいことだと思います。一方で食事指導や運動指導のように、その人の読書能力を引き出すような働きかけや、読書習慣をつけてもらうようにすることで、人生の波に対応できる体力をつけてもらうことができれば、と考えました。

そういった中で、「読書セラピー」という言葉は、「セラピー」が「療法」の和訳にあたる言葉ではありますが「療法」や「指導」ほど硬くなく馴染みやすい言葉に感じます。アニマルセラピーやカラーセラピーなど、様々な○○セラピーが世に存在しています。

今回ご紹介する本は、日本読書療法学会の会長である著者が、自身の経験や豊富な読書歴、活動歴から書き起こした、「読書セラピー」についてよく分かる本です。

この日本読書療法学会の存在も恥ずかしながら最近存じました。読書療法は読書の道の一つであり、読書人の力を発揮できる活動の一つとなると思います。

読書療法とはどういうものかということのみだけでなく、この本を読めば、読書の効果や方法について総覧的に理解することができます。

読書はけっして自分のためだけのものではないと思います。読書で自分を高めることで周囲の人の助けになることや、周囲に良い影響を与えることにも繋がったります。

それに加えて、読書セラピーという読書の強力な能力を知ることで、自分の読書に自信を持ち、より良い読書ライフに繋がることは、間違いありません。

読書セラピーのSPIRIT

 S Spirituality スピリチュアリティ

 P Perception 認知

 I Insight 洞察

 R Relevancy 関連性

 I Integration 統合

 T Totality 全体性

(P94)

今後はVUCAの時代と言われます。Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:あいまい性ということです。

このVUCAに対応する手段として、上に述べられた読書セラピーのSPIRITに表される6項目は、大変重要なものと考えます。

ときに「洞察」は人間の生活において大切なものです。これとスピリチュアリティは、AI時代に生きる人間として、しっかり摑んでおきたいものですね。

読書セラピーでできること

 対応能力の改善

 自己理解の向上

 対人関係の明確化

 現実認識の深化

(P98)

読書のメリットは色々と考えられますが、この4点に集約されるかもしれません。外なる世界に対しては対応能力の改善、対人関係の明確化、現実認識の深化で広く深く対応できるようになります。

また、自分の内なる世界に対しても自己理解の向上を促し、この自己理解には意識だけでなく広く深く潜在意識や集合的無意識と言われる部分まで導いてくれると思います。

ただ、読書セラピーの場合には、むしろゆっくり読む事をおすすめします。(P172)

本書では読書の方法についても、豊富に述べられています。その中で私はこの部分にハッとしました。

巷では「速読」なども読書の方法論として紹介されており、場合によっては効果的な面もあります。

ただ、「読書セラピー」としての読書の場合には、やはりゆっくり読むのが良いのでしょうね。

あえて意識的にゆっくり読むという行為にも、瞑想などにも繋がる読書の効果を高める働きがあるのだと思います。

ついつい速く読もう、たくさん読もうとしてしまいがちですが、本によってはじっくりと、滋養を心身に沁みわたらせるように読むことも意識したいと、あらためて思いました。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。