「投資」という感覚神経

2022年4月9日

ジェイソン流 お金の増やし方 厚切りジェイソン ぴあ株式会社

お金儲けの話をするのは、みっともない。投資なんてギャンブルと同じだ。

日本人の多くはこのように感じているかもしれません。私も感じていました。

“感じていました”と過去形にしましたが、「この本を読んでその考えが変わりました」というわけでもありません。

ただし、“みっともない”、”ギャンブル“というイメージは軽減されました。

もちろん、お金のことばかり考えて人間関係や自分の仕事に支障を来すようではみっともないですし、投資もふるまい方によってはギャンブルになります。

お金のことを考えるのは大切です。投資のことを考えるのも、いいでしょう。強制されるものではないでしょうが、何も知らないで毛嫌いするものでもありません。

新たな知識は新たな地平を開いてくれます。知識を得ることによって世界が変わって見えます。

読書は知識を得る効果的な作業です。そして、知識は実践して知恵とすることが大切です。

では、この本を読んで、“さあ投資!”とするか。そこは人それぞれでいいと思います。

知識は、どのように知恵になるか、これまでの経験、自分の解釈、周囲の状況、いろいろなものと混ぜられて、知恵となります。

ただ、こういった本を読んで知識を得ないと、知恵にも実践にも繋がりませんので、まず読んでみることもいいかと思いました。

お金のことをしっかり考えるのは、お金が廻って成り立つこの世界では、ある程度覚悟する必要もあるでしょうね。

また、引用にもありますが、世界を覆っている気分や感情を数値化しているのも、株価や相場などの数字に表れているようです。

人間は人の間をうまく取り持って生きています。人の間を取り持つツールの一つは言葉や文字でしょう。

さらに加えて品物もそうかもしれませんが、その代替ともいえる「お金」も人の間を取り持ち、人間関係を成立せしめている重要な要素なのかもしれません。

ちょっとした興味で読み始めた本書ですが、そんなことも考えさせてもらいました。

資産を形成する上で大切なのは「投資額を増やすこと」。そして、この投資額を増やすために最初にやらなくてはいけないのが「支出を見直すこと」なんだ。「収入-支出」を最大化することで、投資に回せるお金が増えるんだよ! そう考えると、日頃自分が使っているお金を見直したくなるでしょ?(P42)

いきなり投資にいかないまでも、この“支出を減らす”というのは今日からできることだと思います。

どうしても、仕事帰りにコンビニに立ち寄り、ビールを買ったりお菓子を買ったりしてしまいます。

幸いなことに、家では食事を用意していてくださるのですから、まっすぐ帰宅してそれをいただけば良いのに。

なんとなく、惰性でコンビニに立ち寄り、何を買うか目的があるわけではなく、目についたものを買っているような気がします。

ペットボトル飲料もコンビニで気安く買わないようにと書いてありました。たしかに、ペットボトルでもお菓子でもビールでも、スーパーなどでまとめて購入したほうが、安上がりです。

そうして支出を減らし、投資に回すお金を増やすわけですね。投資にまわすではなくとも、支出を減らすことからでも始めてみようかと思いました。

株価のほとんどは人間の感情を基に動いているといっても過言ではないと思う。なにかの情報を基に人の心理が動き、それにほかの人もつられて、株価が上下しているんだ。

・・・・あと、投資をすると、資産を増やすだけでなく、世界に目を広げられるようになるし、創造力も養えると思う。経済がいかに世界を回して、国だけでなく、末端の僕たちの生活を変えていくのかということも感じられるはずだ。(P152)

冒頭でも述べましたが、人間は人と人との間でさまざまなモノをやり取りして生きています。

コミュニケーションによって協力することで、強大な肉食動物から身を守ったり、巨大な、あるいは俊敏な獲物を捕獲したりしました。

コミュニケーションのツールとしては、おそらく発声から発展した「言葉」が、情報の伝達に役立ったでしょう。

さらに、「絵」で示したり、言葉の内容を形として残す「文字」を用いたりすることにより、異なる時間、異なる場所にいる人にも情報を伝えることができるようになりました。

これらは現在でも人間の重要なコミュニケーションツールとして役立っています。

さて、古くから人間の生活に附随してきた「お金」も、そういったツールの一種と考えられないでしょうか。

言葉や文字は世界中を行き来して、人間たちに知識や情報を受け渡しています。絵画や音楽も同様に、人間たちに感動や感情を受け渡しています。

他人の考えや感情、あるいは世界の知識や情報を得るために、文字で書かれた本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を鑑賞したりします。

我々は人と話したり、手紙やメールを使ったり、ニュースを見たり、ネット検索したり、本を入手したりして知識や情報を得ます。そして、知識や情報の動向を感じます。

お金もある意味、世界中を行き来して、人間たちの生活を成り立たせています。あるところには集まり、あるところでは乏しく。あるところでは信頼され、あるところでは貶められ。

お金は人間の感情や気持ちの変化で価値が変わり、ときには吹き溜まりのように貯まることもあれば、一瞬にして消え去ることもあります。

そういったなかで「投資」は、そのお金の動きを感じるプローブ(探索子)のような働きをするのかもしれません。

自分からプローブを投入しなければ、動向を感じることはできません。水の流れは指を入れて、風の流れも指や肌をさらすことで感じます。

お金の流れを感じるにも、まあ商品の値上げや増税などで感じることもあるかもしれませんが、「投資」という行動で、自らの感覚神経を「お金」の流れに投入する行為なのではないでしょうか。

さらには、お金の流れ、変化を通じて世界の動向や人々の感情に、いままで無かった創造力を持つことができるのかもしれません。

「お金」は、人間という得体の知れないものに対する、切り口の一つと言えるでしょう。

そして「投資」は、その切り口を活用し、世界を良く見るための「感覚神経」となるのです。

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