「りんご」そのもののおいしさを感じるためには、りんごそのものを生で食べるのが一番かもしれない。
でも、皮をむくのが面倒くさいとか、硬いとか、酸っぱいとか、ミソになっているとか、いろいろ問題もある。
りんごそのものを食べるのもいいが、りんごを素材として調理する、あるいは加工するのも人間の特徴である。
アップルパイを食べたり、リンゴジュースを飲んだり、リンゴジャムでパンを食べたり、サラダにしたり。
いろいろな人が考案し、調理された(皮をむくのも調理かもしれないが)りんごを食べると、我々はりんごを美味しく味わうことができる。
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読書についても同じだと思う。
『資本論』そのものの面白さを感じるためには、資本論そのものを読むのが一番だろう。
でも、原著やその翻訳は分量が多いとか、厚いとか、字が小さいとか、難しいとか、いろいろ問題もあるだろう。
そこで、解説書である。いろいろな人が、資本論を解釈し、味付けし、現状や様々な事実と混ぜ合わせ調理して提供してくれている。
『100分で名著』シリーズも、著名な本を番組放送と併せながら、詳しい人が解説してくれる。
そして、「新書」という本の形態も、様々な素材の味わいを知るための“とっかかり”として、良いのではないかと思う。
ある事柄について、例えば人工知能であったり、歴史であったり、まずはそれに関する新書を入門として読んでみる。面白かったら、より詳しい成書を手に入れる。
新書の良い点は、コンパクトなことである。“新書サイズ”とも呼ばれる黄金比の手のひらサイズは、手にして持つにも丁度良い。成書はたいてい、持って読むには少し重い。
新書は、いわばある素材のおいしさを味わうための、代表的な調理例といったところか。