人生心得帖/社員心得帖 松下幸之助 PHPビジネス新書
「職場は人生の道場。かけがえのない人生を、仕事を通じて自分の力で充実させていこう」
松下幸之助氏は松下電器の創業者として有名です。そして仕事や生き方に対する自己の経験とするどい洞察を、多くの本に著しています。
今回ご紹介する本は、松下氏が「人生と仕事の心構え」を説く一冊です。
ときどき、今の自分の立場や仕事に対する姿勢を振り返るために、繰り返し読みたい一冊です。
「職場は人生の道場である。給料をもらうだけのところではない。地位が上がって偉くなるだけのところでもない。最も大事なのは、一人の人間として、職場の中で、自分の個性、持ち味を十分に発揮できるようにしていくことだ。自分自身のかけがいのない人生を、会社で仕事をすることを通じて、自分の力で充実したものにしていくことだ」
(P7)
「職場は人生の道場」という考え方は、私もとても好きです。本当にそう思います。
交友、愛、仕事はアドラーの言う人生の三つのタスクです。そして、仕事は決して交友や愛のために使うお金を稼ぐだけのものではありません。
仕事はたんに給与を得るためのものではなく、「能力」や「仲間」や、あるいは「生きがい」などいろいろ得るものがあります。
人生を進めていくためのノウハウを学ぶ、まさに「道場」でもあると思います。
地位や名誉や財産といった基準に重きをおきすぎて、みずからの独自の天分を活かし、使命に生きることの大切さが忘れられている傾向が、会社や団体にも学校にも少なからずみられるようです。それが、不満や悩みを増やすことに結びついているのではないかと思うのです。
(P37)
給与の良い会社に就職したい気持ちは自然なことです。しかし、本当に自分の天分を活かせるかどうかを考えることも重要です。
まあ、最初から自分の天分や使命など分かっている人は少ないと思いますので、そこは、「好きなこと」であるとか、いわゆる「原体験」などを考えるのがいいでしょう。
そうした悩みというものは、物事の一面のみを見て、それにとらわれてしまっているところから生まれている場合が多いのではないでしょうか。
(P80)
もちろん、仕事ではトラブルもあります。うまく行かないこともあります。
顧客や職場の同僚に迷惑がかかるのは、最小限にしつつ、起こったことを直視して、次に繋げましょう。
まあ、その日は怒られたり、落ち込んだりするかもしれません。
次の日には1ミリでも成長していれば良いのではないでしょうか。
あまりいつまでも、とらわれずに。
意気盛んですぐれた力をもった人の出現を喜び、これを押し上げていこうという心持ちにこそ、ほんとうの民主主義があると思うのです。・・・だから、嫉視されることを恐れず、勇気をもって真剣に仕事に取り組んでいくべきだと思います。
(P185)
お互いに職場の中のすぐれた一人になるよう努めることが大切なのはいうまでもありません。しかし、それとあわせて、周囲のすぐれた一人が上に登ろうとするのを引きずり降ろそうとするのではなく、“能ある人にはそれにふさわしい仕事をさせよう。さあ、上に上がれ”とあと押ししてやる。
(P195)
以前にも書きましたように、「出る杭」になることを恐れずに。
さらに、周囲も「出る杭を打つ」ようなことはしないように。
ぼくはそういう心のかよいあいの中に、仕事がはかどり、ものを生み出す原動力があると思う。だから、君にも、そういう思いやりが、上司に対してはもちろん、周囲の人たちに対して自然にできる人になってもらいたいし、そうなってこそ、君の仕事の成果も大いにあがるのではないか。
(P197)
ここでは、そんな一人ひとりの心がけと、周囲の気遣いを示していると思います。
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仕事を通して自身の鍛練を行い、さらに後輩の指導なども行う。まさに「職場は道場」です。
教わる側の姿勢もさることながら、上司としても仕事はもちろん鍛える。さらに、人間としても鍛えるという気持ちが大切でしょう。
そして、「道」というのは技術だけではなく、その「心」も必要です。
職場が、そんな「技術」と「心」を伝えられる場になればと、思います。