三密加持すれば速疾に顕る

2020年4月24日

“3密“と聞くと、次の言葉しか思い浮かばない。

“三密加持すれば速疾に顕る(さんみつかじすればそくしつにあらわる)”

これは決して、「3密の状態でいると疾病がすぐに拡がりますよ」などと言っているのではない。

なにしろこれは弘法大師空海がその著書『即身成仏義』に記した言葉であり、1300年ほど前の空海の言葉なのである。

空海を開祖とする真言宗、すなわち真言密教は、心や体を動かす実践活動に重きをおいていることも特徴的な宗派だと思う。

“密教”というと、なんとなく”アヤシイ”雰囲気が感じられるかもしれないが、そうではない。

そもそも“密”教とは、その反対の顕教が大衆に教えを広めようという考えであるのとは異なり、師匠から弟子への修業、相伝によるという、密な教えの伝え方によるところから来ているとも言われる。

空海の言うところの“三密”とは、心や体の活動であり、

・身密:身体を動かすことによる活動、静かに坐したり、呼吸を整えたり

・口密:口から発する言葉による活動、真言を唱えたり、経典を読誦したり

・意密:心に思い、考えることによる活動、仏や教えを思い、あるいは無心に

のことである。これらは真言密教の主たる仏である大日如来の活動でもある。

これらは我々人間も実行することは可能な活動である。それゆえ我々もこの三密に留意して生活すれば、大日如来と同じように人格高く生きていくことができる。

これが空海の代表的な思想の一つ「即身成仏」である。

ということで、空海の“三密”と、今話題の“3密“は異なる。

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いま、新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐため、避けなければいけない“3密”の状態。

しかし考えてみれば、“3密”を要する活動は人間の、人間としての活動に欠くことのできない活動でもある。

まず、“3密”は文化のゆりかごでもあり、共有の場でもある。ライブハウス、小劇場から映画館、劇場や歌舞伎座といった芸術の修練、披露の場など。

今は絶大な人気を誇るバンドや歌手、演奏家、俳優も、すべてはここから始まり、旅立って羽ばたいていったのだ。

人間の物語を描き上げ、フィルムとして世界中に発信する映画。小さな町にも映画館は存在し、人生の機微や共感を人々に伝えた。

また、稽古に稽古を重ねて大勢の前でその芸を披露する舞台。これこそが大衆の文化水準を上げ、文化の薫り高いこの国を作り上げてきたのだ。

教育の場である学校については、言うまでもない。

一方、“3密”はコミュニケーションの一形態であり、幸せな時を過ごせる状態でもある。

料理店にしても、料理人は修業の成果を振るって披露し、それをいただく方もときには静かに、ときには会話をはさんでワイワイガヤガヤ食べることで、味も一段と格別になるのである。

居酒屋、バー、あるいはキャバクラでも何でもいいが、人それぞれに思うところにまかせ、おいしい飲み物に話をはずませ時を過ごす。

独りだったり、二人だったり、大勢であったり、あるいは素敵な人に囲まれたりして幸せな時間を過ごす。

私も、気の合う後輩なんかとサシで飲むときなど、幸福な時間を過ごさせてもらっている。

またそういう時がくるのを、心待ちにしている。

そのためには、今できることを、するのみである。

手洗い、マスク、健康管理。

そして“3密”を避けることである。

今は、ちょっと、がまんの時である。

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さて、考えてみると空海のいう身密、口密、意密による“三密”も、あながちこのウイルス禍の対処法として似つかわしいものなのかもしれない。

すなわち、

・身密:手洗いと健康管理で“身”を清く健やかに、

・口密:ウイルスの“口”を介した出入りを防ぎつつ、言葉による励まし合いや情報交換を続け、

・意密:皆が“意”を一つにして、この難局に立ち向かっていこうではないか。

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