中学の知識でオイラーの公式がわかる 鈴木貫太郎 光文社新書
オイラーの公式は、次のような式です。
eiπ=-1
いかがでしょう。不思議な感じがしませんか。「e」というのは自然対数の底、いわゆるネイピア数です。具体的には2.71828・・・と無限に続く無理数です。
「i」は置いておいて、「π」は角度を弧度法で表すときに使います。360°=2πです。また、円周率としてはπ=3.14159・・・と無限に続く無理数です。
eは明らかに正の数であり、πも正の数です。正の数を何かで乗じて、しかし右辺はマイナスになっています。このアクロバティックな妙技には、虚数単位「i」が関わっています。
この不思議な、しかし魅力あふれる公式についてこの本では、中学生で勉強する数学のレベルで理解できるように、三角関数からπやeなど順序良く説明が積み重ねられます。
話は複素数へと進み、「i」が旅の同行人となります。ド・モアブルの定理へと進み、なかなか険しい道になってきますが、著者の基本的なことから一つずつ示し進めていく教え方で、なんとか足を進めることができます
最終的にはオイラーの公式という数学の世界の山頂の一つに登頂することができます。
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同じ太陽でも、普通に晴れた日に見上げるよりも富士山頂から雲海に浮かぶ姿を眺めるほうが圧倒的に美しく感じるはずです。ご来光に思わず手を合わせて拝みたくなるかもしれません。それは、自分の足で標高3776mの頂まで登るという過程を経て、かつ視界を遮るものが一切ない日本一高いところに立って眺めるということが起きな要因でしょう。(P5)
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勉強はなんでもそうかもしれませんが、答えをすぐに知ってしまうのと、途中経過を大事にして答えを導き出す二通りがあるかと思います。
過去問を解いて答えのパターンを覚えるような試験勉強は、前者に近いかもしれません。また、とくに数学などは答えの数字が合っていても、それを導く途中過程の流れがしっかり書けていないと、点数はもらえないことが多く、後者にあたるかと思います。
試験に合格するためであれば、性急に答えを求めて解いていくことも大事ですが、やはり学問というか、勉強には経過を楽しむというのもあるかと思います。
ほかにも、工作であったり、料理であったり、はたまた自宅を建てるという場面でも、作っている途中や、調理の過程、あるいは設計やデザイン、調度品の検討が楽しいと感じることも多いでしょう。
そもそも高い山頂を目指す登山にしても、最初からヘリコプターかなにかで山頂に到達したのでは、眺めはいいでしょうが、あまり面白くありません。ふもとから一歩一歩歩き続けて、途中で休憩したり、道端の草花を観察したり、そういった過程を経て登り着いた山頂では、眺める景色も違うと思います。
この本は、そういった、過程の楽しさを、分かりやすく説明しながら数学界のかなりの高みに連れていってくれる本です。また、途中に繰り広げられる一見、一休みや寄り道に見える詳細な説明も、旅の楽しみとなっています。
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著者はネットなどでも大学入試問題などの難解な数学問題を、分かりやすくスラスラ説明して解いてくれます。私も思わず見入ってしまうことがありました。
数学がキライという私みたいな方も、順序よく説明される内容をかみしめながら歩いていくと、学生時代のつらい勉強で受けた印象とはまた違った、数学の面白さを感じることができること必定です。
思えば中学高校といろいろなことを勉強しましたが、当時は本当に受験のための勉強という感じで、学問そのものの面白さなんて考えてもいませんでした。
受験に必要だから理科は2つ勉強するとか、受験に必要ないから歴史は勉強しないとか。数学なんて何やってるか分からないけれど覚えるという感じでした。
しかし、今になり読書を通していろいろなことを勉強すると、まあ受験という人生の戦場から一歩ひいた立場から見ているからかもしれませんが、数学にしても歴史にしても受験や仕事に直接役に立たないとは言っても、自分の生き方を豊かにしてくれるものを感じています。