謙虚力 松井住仁 幻冬舎
「謙虚さ」というと、その人の性質、性格のような話になってしまい、なかなか訓練して身につけたり、勉強したりできるものではないような感じがします。
そこでこの「謙虚力」はいかがでしょうか。
最近「~力」というのが流行っています。もともとはその性質をうまく利用してやっていきましょうということなのだと思います。
しかし私はこの「~力」というのは、自分で能動的にその力を、場面に応じて発揮したりしなかったりしていう能力なのではないかと思っています。つまり、調節可能な「性質、性分」です。
「謙虚さ」を身につけた、性格・性分として持っている人は、なんだか常に謙虚に振る舞っており、周りもそれを期待しているような気がします。
それに対して「謙虚力」は、必要に応じて「謙虚さ」を使うことができる能力ではないかと思います。
上司や先輩に対して謙虚になるのは、当たり前です。それが実(じつ)のあるものかどうかは別にして。
しかし、難しいのは同輩や後輩に対して謙虚になれるかです。それはまさに場合によりけりでしょう。
謙虚になる必要があると感じればなればいいし、そうでなければ堂々と自分を通していいのだと思います。
「謙虚さ」一辺倒でいくのではなく、場合に応じて「謙虚さ」を発揮するのが「謙虚力」だと思います。謙虚になるか自分を通すかは、著者は7対3の割合くらいがいいのではないかといっています。
(かといって、あまりに謙虚を貫くのも考えものですよ。こちらの記事も、ぜひご参照ください。『「出過ぎた杭は打たれない」・・・「謙虚さ」再考』)
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だから僕は、いわなければいけないことは言うようにしています。それは自分を守るためでもあるのです。自分で自分を肯定し続けるのです。
これを、仏教用語では「自灯明」というそうです。最後は自分が自分の灯、道しるべになるのだという意味です。自分で自分のことを好きになったり、信じてあげたりできなければ悲劇です。
・・・その自己主張のバランス感覚の黄金律とでもいうべきものが、7対3なのだと思います。7割は譲っていい。その代わり、決して譲れない3割は守り抜く。絶妙なバランスです。(P51-52)
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相手と自己主張のバランスは7:3
謙虚といっても、すべて相手の言うままにして自分を出さないわけではありません。それでは自分がなくなって、まさに単なるパーツの一部に過ぎないという意味で組織の歯車の一つになってしまいます(最近、その歯車が欠けたら動かないじゃないか、とも思うようになりましたが)。
自分のなかにも芯となる考えを持って、そこは譲れない。この相手の意見をのむことと自己主張の割合にちょうどいいのが7:3だというわけです。
「自灯明、法灯明」はお釈迦様の言葉であり、「自分をよりどころとし、またお釈迦様のおっしゃったことをよりどころとする」ということです。
自分をよりどころにするには、自分がよりどころになるだけのしっかりしたものである必要があります。
そこは、様々な経験や読書から作っていくものだと思います。お釈迦様のおっしゃったことは、これまで様々な経典などにまとめられています。
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喧嘩をしてしまえば、謙虚とはいえなくなります。
さりとて受け入れる、負けを認めてしまえば、自分のアイデンティティーが保てなくなります。
だから、その場から立ち去ってしまうのです。逃げるが勝ちです。戦って負けたら嫌ですし、勝っても仕方がないでしょう。「戦場において、敗者の次に惨めなのは勝者だ」という有名な言葉(ワーテルローの戦いに勝ったウェリントン公爵)があります。(P58)
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逃げるが勝ち
喧嘩は疲れます。身体的にも、精神的にも。私もあまり人と争ったりしないようにするのは、これがいやだからかもしれません。
戦争も、莫大な費用と損害があり、たとえ勝利側になったとしても、その後も強硬な姿勢を保つ必要があり、ぎちぎちしてしまいます。
歴史をひもといてみても、戦勝国がその後平和に暮らしましたとさ、という話はありません。さまざまな問題が起き、緊張のなかで過ごすことが多いようです。
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これをサーバントリーダーシップというそうです。サーバントとは召使とか執事といった意味ですが、この場合は奉仕者と訳されるそうです。
うまく組織、チーム、そのメンバーに気配りをして、必要なケアをする。うまく回っていないところは手助けをして、メンバーの感情、メンバー間の人間関係にまで気を配る。
まさに奉仕をして、チームとしてよい状態をキープし、さらに効率が上がるように仕向けるわけです。いないように見えるリーダーこそが優秀なリーダーというわけです。(P104)
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上司は部下が働きやすいように気配りを
部下に迎合してへこへこすることは必要ないと思いますが、ある程度部下を信頼して、思うようにさせてやるのが、リーダーシップの要点の一つかと思います。
人にもよりますが、みな勉強しています。部下が自分よりも物事を分かっていることもあると思います。
それを踏まえて、自分の固定観念や経験則から部下に指示するのではなく、部下の意見もよく聞いて、「ふーん」と思ったら、その通りにさせてみましょう。
一方上司としては、何かあったときの責任は任せろ!ということで、部下のやっていることの内容をよく把握して、気配りしつつ観察するのが良いとおもいます。
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「謙虚さ」という徳を、いかに使うか。「私はこんな謙虚さです。どうぞつきあってみてください」という受け身ではなく、状況に応じて「謙虚さ」を発揮・駆使する「謙虚力」というものを、ひとつ考えてみてはいかがでしょうか。